PiPi's World 投稿小説

インキュバス〜伊賀淫法帖〜
官能リレー小説 - 時代物

の最初へ
 4
 6
の最後へ

インキュバス〜伊賀淫法帖〜 6

「いい空気だ……」
土埃の舞う都の空気とは異なる清涼な空気を胸に満たしながら、半蔵は昨夜の自分の行動を振り返る。
最強のくノ一であり、次期当主である朧を堕とせば、甲賀忍軍の士気は確実に落ちる。
六角軍のゲリラ戦に苦戦しているものの、勢力的には幕府の軍勢の方が圧倒的に多いのだ。
甲賀忍軍という支えを失えば、如何に六角高頼が名将といえど滅びるしかない。
もしそうなればその功績は間違いなく第一功。幕府内において忍崩れの新参者と蔑まれてきた半蔵にとっては失敗できない仕事だ。
ちなみに彼等が滞在している宿場町の近くにある山を越えた先にある村では、とある風習が存在していた。
それは、若い娘を神に捧げることで豊穣祈願を行うというものである。
この風習の起源については諸説あるが、有力な説の一つとして『村の外れに生えている木に、娘の生き血を捧げることで実をつける』というものが挙げられる。
それが真実かどうかは定かではないが、少なくとも近隣の村々の間では広く信じられていた。いつしかその風習は形骸化し、今では単純に若い女が生贄として選ばれるだけの儀式になっている。
そして、今年選ばれたのはとよという派手な女であった。
とよは今回の生贄騒動で、非常に運が悪い女であると言えよう。しかし一方で、村にとって生贄にするには非常にありがたい人材であるとも言えた。というのも、とよという女は極端に信仰心が薄く、村に訪れる旅人にちょっかいをだすことも珍しくないという問題児だったのだ。
そんな女が村の風習によって消えてくれるのであれば、むしろ万々歳といったところだろう。
「というわけで、とよ。お前は生贄になってもらう」
「えぇっ! いやよ! なんで私が!?」
とよはただでさえ大きな目をさらに見開く。しかしそんな彼女に対して村人達が取った行動は、ただ静かな視線を送るだけだった。
「ちょ…なんでよ? 黙ってないで何か言って!」
そんなとよの訴えもむなしく、村人たちはとよを小屋に閉じ込めた。
「ねぇ!なんで!?お願いだからここから出して!」
閉ざされた扉の向こうから聞こえてくる声に、村人達は耳を塞ぎながら首を横に振る。
(恨むのなら、自分の運の悪さを恨むんだな)
そんなことを考えつつ、村人達は各々家路につくのだった。


,
の最初へ
 4
 6
の最後へ

SNSでこの小説を紹介

時代物の他のリレー小説

こちらから小説を探す