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大正★陰陽伝
官能リレー小説 - 時代物

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大正★陰陽伝 3


その頃、晴也は依頼人である美女の話を聞いていた。
彼女は京子(きょうこ)と名乗った。
「さて京子さん、本日はどのようなお悩みで参られました?」
「はい、先生…実は、その…近頃おかしいのでございます…変なのでございます…」
「はあ、一体何が変なのです?」
京子は自らの(春美や小春には及ばぬものの)豊満な胸元に手を添えて言った。
「それは…私が…でございます」
「あなたご自身が?一体どのように変なのです?」
「先生…先生は私のこのお洋服、どう思われまして?」
不意に尋ねられ、晴也は答えに困った。
「はあ…とても情熱的かつ扇情的かと…」
これだけ言うのが精一杯だ。
…というのも彼女の着ていた真っ赤な服…ワンピースなのだが、これがまた胸元が大きく開いており、ノースリーブかつスカート丈は膝上という、この時代にしてはかなり露出度の高い服だったのだ。
まるで男を誘っているかのようだ。
京子は言った。
「実は私…以前はこんなんじゃあなかったんです…。こんな、いかにも男性の情欲を刺激するような格好をする女では…」
「ふむ…では何故そのような服装をなさるのです?いつ頃から?何をきっかけに?」
「はい…それは……」

京子は語り始めた。
おかしくなり始めたのは二ヶ月ほど前からで、その頃を境に彼女は身体の内から何とも耐え難い情欲が湧き上がって来るようになったという。
それは、初めの内は当人も気付かぬ程の小さな物であったが、次第に増していった。
自身が気が付いた頃には、扇情的な服装で街中を練り歩き、道行く男達の欲情した視線を集めて快感を覚えるようにまでなっていたという。
そうなると、もう何をしていても男に抱かれる事を考えてしまう。
逞しい男根で自らの性器を貫かれ、激しく腰を振られて膣内に精液を注がれる…そんな事を想像しながら白昼、股を濡らした。
それが一度や二度の話ではない…などと言うのではない。
常に、である。
そのため、いかなる作業も手に着かなくなり、カフェーの女給の仕事を辞めざるを得なくなった。
それはさながら発情期を迎えた獣の雌の如しであり、彼女はまるで熱にでも浮かされたかのように男を欲するようになった。
もちろん彼女にも理性はある。
現実に情欲の赴くままに男を漁る淫婦となるには躊躇いがあった。
とにかく自分は男と接してはいけない…そう考えた彼女は次第に家に籠もりがちになっていったという。
だが、それで体の内から湧き出る性欲が収まる訳でもなく…。

「むしろ、ますます体の疼きは増すばかり…それで、先日とうとう我慢できなくなってしまいまして…」
「出来なくなってしまって…どうなさったのですか?」
「ある男性の元に“夜這い”をかけてしまったのです…その…私にとって最も身近な男性…つまり、父に…」
「え…っ!?」
晴也はギョッとした。
「お…お父様と…その…なさったのですか…!?」
すると京子は首を横に振って答えた。
「…いえ、さいわい父はもう六十近くでございまして、アレが勃ちませんでしたので、最後の一線は越えずに済みましたけど…」
「…あ…そうだったんですか…」
「…うわあぁぁ…っ!!!!」
不意に京子は両手で顔を覆って泣き出す。
彼女は晴也にすがりついて訴えた。
「…お願いいたします先生!どうか私を助けてください!お医者さんに相談してみましたが原因は判りませんでした!もう悪霊か何かの仕業としか思えません!このままでは私、本当に獣に成り下がってしまいそうで…恐ろしくて…!」
「なるほど…話は解りました。この土御門 晴也にお任せください!…ちょっと準備したいので少し部屋の外で待っていていただけますか?」
「…はい、解りました…」
京子は部屋を出た。

彼女が廊下で待っていると、そこにお盆にお茶とお茶請けの煎餅の入った皿を載せた春美がやって来た。
「…っ!!」
京子の姿を見た春美はハッとして立ち止まる。
(まあ!?土御門さんのお客さんって女性の方だったの!?ま…まあ確かに、あの方には不思議な魅力があるし…女性の一人もいてもおかしくはないと思っていたけれど…)
春美は値踏みするようにまじまじと京子を見た。
(た…確かに若々しくて綺麗な方だけど、お洋服の着こなしは酷いわね。男性を挑発するかのような真っ赤なワンピース…まるで淫売だわ。土御門さんったらこんな女性が好みなのかしら…?)
一方、いきなり現れた婦人にねめまわすように見られた京子は少し退き下がり気味に尋ねる。
「あ…あのぉ…あなたは…?」
「あら、失礼。私、こちらの下宿の大家をしております、橘 春美(たちばな はるみ)と申します」
「き…木江 京子(きのえ きょうこ)です」
「木江さんね…それで、あなた、土御門さんとは一体どんなご関係なのかしら?まさかいかがわしい関係なんて仰るんじゃないでしょうね?まさか家の下宿で、あなた方、いかがわしい事なんてしてらっしゃらないでしょうね?」
京子に詰め寄る春美。
別に下宿人が部屋に女を連れ込んでナニをしようが(部屋を損傷したり隣人に迷惑が及ばない限り)大家に口を出す権利など無いのだが…。
「い…いかがわしい…?…とんでもない!私、土御門さんに悪霊祓いをお願いしに来ただけです!これ…!」
京子は新聞広告の切り抜きを見せた。
「……あ……あぁ……そ…そうでしたの…。そういう事でしたのね…。いやだわ、私ったら…ヘンな想像してしまったりして…ほほほほほほ…」
そこへ、戸が開いて晴也が顔を出した。
「準備が出来ました」
「「!!」」
晴也の姿を見た京子と春美は思わず息を飲む。
彼は神社の神主のような出で立ちをしていた…すなわち、頭には立ち烏帽子を被り、小袖と袴の上に白い狩衣、眼鏡は外し、後ろで縛ってまとめていた髪は解いて背に流している…まるで女性と見紛うような美しい青年の姿がそこにはあった。

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