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異説/番町更屋敷
官能リレー小説 - 時代物

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異説/番町更屋敷 6

風魔小太郎が北条氏の滅亡後は盗賊に身を落して江戸の町を荒らし回っていた。
高坂甚内とは対立関係にあったため、風魔一党の隠れ家を密告し、慶長8年(1603年)に風魔小太郎は捕縛処刑された。
しかしその高坂甚内も関東一円に散らばる盗賊を糾合し、治安を脅かしかねない巨大な存在に成長したため、ここに来て幕府は高坂甚内と縁を切り、追討の手を向けた。その後は逃亡を続けた。
鳶沢甚内に幕府は協力を要請した。
十年後の慶長18年(1613年)に捕縛され、市中引き回しの上浅草鳥越の刑場で磔にされた。
捕縛された時に瘧(マラリア)を煩っていたといわれ、死に際に「瘧さえなければ捕まることはなかったのに。瘧に苦しむ者は我に念ぜば癒してやろう」ということを言い残したという。そのため、浅草にある甚内神社では瘧にご利益のある神として祀っている。
関ヶ原の戦いから吉原遊廓の成立までに、かつての忍は淘汰されて姿を消した。
幕府に協力したツナギは、流派や血統ではなく利害関係で結ばれた。
阿国が姿を消した。庄内甚右衛門は城の大奥に関ヶ原の前夜に現れたくノ一が、のちに春日局と呼ばれるとは知らない。
春日局は、松平信綱、柳生宗矩と共に家光を支えた「鼎の脚」の一人に数えられた女傑で、三代将軍家光の乳母である。
ツナギは忍ではない。
服部半蔵の一族も、初代は忍だったが二代目からは忍ではなく武将として生きた。
盗賊のごとく生きるか、仕官するか。ほとんどの男性の忍はそうした道を選んだ。
ツナギは忍と依頼者を繋ぐ者であった。
青山主膳が吉原遊郭に頻繁に訪れるようになって半年になる。
お菊の兄は高坂甚内という、四谷大木戸に住む侠客だったが、罪を犯して御仕置きを受けた。
妹であるお菊は『一生奴』としてして吉原遊郭に下げ渡された。
青山主膳は高坂甚内の捕縛の件に関わり、高坂甚内に身内がいると知り、事情はどうあれ一言でもわびようと吉原遊郭で遊女となったお菊の客についたが、言い出せないまま通い続けていた。
青山主膳は吉原遊郭からお菊を水揚げしたいと申し入れた。
「おめぇさんの気持ちはわからねぇでもありませんがね、惚れていねぇ遊女を水揚げして大丈夫ですかい?」
キセルから煙を吸った甚右衛門が目を細めて青山主膳を見つめて言った。
「手放したくない理由があるなら、拙者も諦めるが、お菊を隠密にするつもりなら、拙者にあずけていただきたいのだ」
甚右衛門は、青山主膳は服部家とつながりがあることも、お菊の兄が幕府に売り渡した風魔の一族のくノ一がお菊の女親かもしれない出生の秘密についてつかんでいた。
「隠密なんて郭にはいませんぜ、青山の旦那。ここは行き場のねぇ女たちが、男の欲情にすがって生きる場所でさぁ……」
「金は用意しよう。高坂甚内の身内はお菊しかおらぬ。それを郭で終わらせるわけにはいかぬ」
「青山の旦那、お菊を抱いてやっておくんなせい。それも済まぬうちから水揚げもあったもんじゃねぇ」
「そうじゃな。いつがいいか……」

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