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異説/番町更屋敷
官能リレー小説 - 時代物

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異説/番町更屋敷 7

「青山様?」
お菊は酌をしながら青山主膳が何か考え事をしているのに気がついて声をかけた。
「したたか酔ったようじゃ……」
お菊は青山主膳を膝枕して微笑した。
「少しお疲れなのかもしれませぬ」
お菊はそう言ったが青山主膳がひどく緊張していて未通娘のようだと、内心では驚いている。
(惚れたおなごと床入りすることは男にとってこれほど緊張するものなのかしら)
お菊は青山主膳には本妻がいるのも知っている。先日、甚右衛門から水揚げの話をされて、相手が誰かは教えられていないが申し入れがあったと伝えられていた。
青山主膳がその相手とは思っていなかったが、床入りに緊張しているのを見て、もしかしたらと気づいた。
商人に水揚げされるなら本妻もあるが、武家であれは使用人か妾になるしかない。
とはいえ、遊郭に長くいれば長生きできる気はしない。それに青山主膳であれば、妾であってもかまわないとお菊は思っている。
青山主膳は兄の高坂甚内を斬って捕らえた男。恩人であり、いつか恩返しをしたいとお菊は思っていたのだ。
高坂甚内は侠客として手勢を集めて賭場を仕切ったりしながら、何かをやらかそうとしていた。
それが何かわからないが、お菊を手ごめにした恨みは高坂甚内が死んでも忘れていない。
「お前と俺は血のつながりはない。孕め!」
実の兄と思っていた相手が欲情して、まだ血のしたたる中に白濁したものを吐き出したとき、そして、女の悦楽に強引に目覚めさせられたとき、目の前が絶望で真っ暗になった気がした。
何故、実の兄と思ってきた高坂甚内がお菊を凌辱したのかわからず、兄の逸物で毎晩のようになぶられながら、快感に溺れさせられる自分は畜生以下ではないかと涙を流した。
その高坂甚内を斬って捕らえた青山主膳にお菊は恩義を感じていた。吉原は女の地獄などと言われるが、兄に「お前は俺のものだ、誰にも渡さぬ」と犯され続ける日々よりましだと思った。
青山主膳が客として通ってくれているので、他の客はとらされたとしても床入りまでしないで酌をして、尻を撫でられたり抱きつかれるぐらいで他の娘が床入りする。
もし青山主膳が抱きたいというなら、お菊はいつでも一夜を共にする気があった。
「お菊、今宵は泊まらせてもらう」
青山主膳が目を閉じたまま言った。耳まで赤いのは酒のせいだけではないようにお菊には思えた。
妻のある身の男でも本気で惚れることがあるとお菊は聞いたことがあった。青山主膳が武家を捨て浪人になってもついていく覚悟がお菊にはある。一緒に死んでくれ、と言われたら心中する覚悟もある。
「……うれしゅうごさいます」
青山主膳の逸物で突かれながら、何度も青山主膳がお菊の名を呼ぶたびに身も心も蕩けていく。青山主膳がお菊の中で精を放ち果てると、お菊も悦楽に跳ばされて、二人とも絶頂の余韻に酔っていた。

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