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爆乳☆陰陽伝
官能リレー小説 - 時代物

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爆乳☆陰陽伝 29

「この香は、その身に多少なりとも霊力を宿しておる者には効かぬのじゃ。晴士の式神二匹はもちろん、そなたも陰陽師として名高い賀茂の一族の者ならば当然であろう…」
「朕もですか?自慢じゃないけど朕、幽霊とか全っ然見えないんスけど…」
「そなたは人の王じゃな。まがりなりにも古(いにしえ)の神々の血を引いておるためであろう…ま、相当薄まってはおるようじゃがのう」
ちゃらんぽらんでも天照大神の血は健在だったようだ。

葛葉は眠っている者達を指して言った。
「その者共は目覚める頃には何もかも忘れておるじゃろう。つまり、晴士が本当は狐だと知っておるのはそなた達だけじゃ」
カイが尋ねる。
「じゃ…じゃあ、私達が黙ってれば全て丸く収まるって事なんだよね?」
「うむ」
「「……」」
カイとコンは保利と帝の方を見た。
「…言わん。言わんよ。こいつが人に害を為す悪狐なら話は別だが、私の知る限りとてもそんなガラじゃないし…」
「朕も言わない!約束する!…てゆーか基本、朕の話は皆信じてくれないです!」
それはそれで哀しい。
とにかく二人とも晴士の正体をバラさないと約束してくれた。
「葛葉様、これでご主人様は大丈夫だコンね」
「うむ…あとは…」
…と、葛葉は眠っている廷臣達の方に目をやると不意に言い放った。
「…そこのお主!さっきから寝たフリしておるのは判っておるぞ」
「「「…っ!!?」」」
四人は驚いて一斉にその人物の方を見た。
そんな者がいたなんてちっとも気が付かなかった…。
「ふふふ…バレていましたか。いやはや、やはり妖狐・葛葉姫は欺けませんね…」
そう言いながら“彼”は閉じていた目を開けて微笑んだ。
まだ若く、精悍さと優しさを併せ持つ整った顔立ちをした好青年であった。
「お…お前!一体何者だコン!?」
警戒するコンとカイ。
だが帝と保利は青年を知っているようで…
「あ!キミは確か道草お抱えの陰陽師で、名前は確か…」
「…光征(みつゆき)殿!?二人とも、そう警戒するな。こちらは私の従兄に当たるお方で…」
「お初にお目にかかります。賀茂光征(かものみつゆき)と申します…」
光征は柔和な笑みを浮かべながら、丁寧に三匹の化性(けしょう)に頭を下げた。
「お主、何故狸寝入りなぞしていた?この葛葉の首でも狙っておったか?」
「いえいえ、とんでもございません。私のような下っ端陰陽師なぞがあなた様を倒すなど夢のような話。
 思いもよらぬ大物のご登場に驚き、知らぬふりをしていただけでございます」
白旗を上げて敵意のないことを示す光征。
従兄の危機に保利はハラハラした様子で、帝は我関せずの態度で見守っていたが・・・。
晴士たちの反応は違っていた。何と言うか・・・この男、どうにも信用できないのだ。
確かに無防備で敵意もない。だけどちょっとでも気を許せば、取り返しのつかないことになるような・・・そんな気がするのだ。
事実、黒狐となった晴士は光征に唸り声をあげて威嚇している。
とは言え、信用しないことには話が進まない。
葛葉は仕方ないと言わんばかりにため息をつき、保利に顔を向けたその時だった。
光征の影が不自然な勢いで伸びたかと思うと、そこからおびただしい数の百足が飛び出し、葛葉を襲った。
よけられない。そう思った次の瞬間、葛葉の姿は煙となって掻き消えた。
「やれやれ・・・。妾の首には興味がなかったのではないのか?」
驚く保利たちが振り向いた先。そこにはいつの間に移動したのか、建物の屋根の上で葛葉がわざとらしい嘆息をついていた。
「いえいえ、私はただ不遜にも帝に襲いかかろうとした不遜なあやかしを退治しようとしただけのこと。
 葛葉姫様のような偉大な存在を手にかけようなどとは思っておりませぬよ」
「み、光征殿!?い、いったい何を・・・!?」
「鈍い女よの、お主。見てのとおり、その男は不意をついて妾たちを殺そうとしたのよ。
 大方、手柄目的の浅ましい理由でな」
「・・・っ!」
その言葉に保利は信じられないと言わんばかりに光征を見る。
彼女の知る光征という男は、陰陽師としてとても尊敬できる男であった。
それが手柄欲しさにこのような暴挙に出るなど・・・。
「はて、何のことでしょう?
 私は帝の御前にこのような人間のできそこないを連れてくるような危険な輩を成敗しようとしているのです。
 何かおかしいことがありましょうや?
 保利。何をしている。おまえも早くそこの汚らわしいケダモノどもを消し去らないか。
 帝の御前で陰陽師の何たるかをお見せするのだ」
「な・・・にをおっしゃっているのです?こやつらは・・・我々の仲間と、その式神ですぞ?
 彼らに害意がないのは私が証明します!どうか落ち着いてください、光征殿!!」
保利の悲痛なまでの叫び。しかし光征はただ悲しそうにかぶりを振るだけだった。
「かわいそうに・・・キツネの幻術に騙されたか。すぐに解放してやる。
 そこでおとなしく待っておれ」
そう言うと、光征は足元の影からおびただしい百足を蠢かせながら懐から札を取り出す。
その様子から保利は一瞬で理解した。彼は自分も殺すつもりだと。
あやかしの仲間として殺すつもりなのだと。

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