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爆乳☆陰陽伝
官能リレー小説 - 時代物

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爆乳☆陰陽伝 28

この事態にはさすがの脳天気な帝も少し心配そうに尋ねる。
「え?…何これ?…なんか爆発したし…大丈夫なの?」
保利が答えた。
「ご心配には及びません、主上。この術は人に化身した妖の正体を暴く術にございます。人が喰らっても何の効果もありません…ま、ちょっと煙たいだけです」

やがて晴士の立っていた辺りにもうもうと立ち込めていた煙が晴れてきた。
煙の中に黒い影が倒れ臥している。
晴士だ…誰もがそう思った。
保利は苦笑いを浮かべながら“それ”に歩み寄る。
「…大丈夫か?だが悪く思うなよ。お前の式神が寸前で避けるか…ら……って……え?……えっ!?」
保利は目を疑った。
そこに倒れていた“もの”に…。
廷臣の一人が叫んだ。
「お…狼じゃあ!!」
続いて他の廷臣達も口々に言う。
「いや、犬じゃ!!」
「違う!!良く見よ!あれは狐じゃ!黒い狐じゃあ!!」
「本当じゃ!黒狐じゃ!!」
帝も訳が解らず頭をひねる。
「…えぇっとぉ……どゆこと?」
道草が応えた。
「つまり…安部晴士は狐だった…という事では…?」
なるほど確かに、黒狐の周りには晴士が身にまとっていたはずの衣服や冠が散乱している。
晴士が黒狐に変じた事を意味していた。
「あ…ああ…あ…安部晴士…お…お前…狐だったのか…!?」
意図せずして晴士の正体を暴いてしまった保利は、わなわなと震えながら晴士と思しき黒狐に手を伸ばした。
「ご…ご主人様…」
「あわわわわわ…!」
二匹の式神達も驚きのあまり言葉が無い。
カイはともかくコンは以前に狐の姿の晴士と交わっているはずなのだが…どうもその時の記憶が曖昧で夢だと思っていたようだ。
保利は思い出していた。
陰陽寮の学士試験の日…化け蟹(カイ)に襲われたあの日に見た光景を…。
泉の中、交尾にいそしむ二匹の美しい狐…その雄の方は世にも珍しい黒狐だった。
「あ…あの時の狐はお前だったのか!!安部晴士!!」
その呼び掛けで目が覚めたのか、黒狐は閉じていた目を開き、ゆっくりと身体を起こした。
そして無垢な瞳で一鳴き。
「・・・クゥン?」

ズッキュウゥゥゥンッ!!(×4)

その仕草を目にした瞬間、何かが4人の男女(コン、カイ、保利、帝)の心を貫いた。
そして4人は同時に思う。
何だ!?このカワイイ生物は!?
ほしい!その手中におさめ、思う存分あのもふもふを堪能したい!と・・・。
そこで4人の考えは2つに分かれる。
すなわち晴士をあやかしとして取り込もうとする考えと。
この場をごまかし、晴士を人間として扱う考えの2つである。
幸い、今の晴士は事態が呑み込めてないのか、変化して思考が切り替わったのか、行動が獣っぽい。
4人は晴士を手に入れるべく、すぐさま行動を開始した。
「ハァハァ…こ…この妖めえぇ〜♪♪♪調伏して我が式神にしてくれようぞぉ〜♪♪♪」
「な…なぁ〜に言ってるコン!!?ご主人様は妖なんかじゃないコン!!…これは…そう!変化(へんげ)の術!狐が人に化けるように、ご主人様は狐に化ける事が出来るんだコン!!」
「どっちでも良い!!それより誰でも良いからその黒狐を捕らえて朕にくださあぁ〜い♪♪♪捕まえてくれたら官職でも領地でも何でもあげるからぁ〜♪♪♪ち…朕は、そのフワフワの尻尾をクンカクンカしたいのです!クンカクンカ!あぁあ!!間違えた!モフモフしたいのです!モフモフ!モフモフ!尻尾モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅいぃ〜♪♪♪(発狂)」
「ご…ご…ご主人様は捕まらないよ!!わ…私が守るもの!!」
「いや、さっき守れコン!!」

…四人は黒狐に夢中になっていて気付かなかった。
ギャアギャア騒いでいるのが自分達だけだという事に…。
いつの間にか辺りには奇妙な香のような良い匂いが立ち込めていた。
その香りは人々の眠気を誘い、帝の侍従も廷臣達も皆、座ったまま眠りに落ちてしまっていた。
「…まったく騒々しい連中じゃのう…」
そう言いながら姿を現したのは、十二単(じゅうにひとえ)に身を包んだ世にも美しい一人の女。
その姿を見たコンが叫ぶ。
「葛葉様…!」
葛葉姫は手の上に乗る程の小さな香炉を持っていた。
どうやら皆を眠らせたのは彼女らしい。
(く…葛葉姫だと!?…安倍晴明の母親…話には聞いていたが、まさか実在するとは…!!)
保利は驚きを持って彼女を見ていた。
葛葉は香炉を地に置くと黒狐を抱き上げて笑って言う。
「フッ…晴士の正体が妖狐だと世間に知れれば色々と面倒な事になるであろうと思ってのう。ましてや悪狐として封滅などされてしまっては面白うない。…一応言っておくが、そんな事になってはこやつの死後、その死肉を妾が喰らえなくなるからじゃぞ?決して玄孫(やしゃご)可愛いさについつい助けてしまった訳ではないゆえな、くれぐれも勘違いするでないぞ?」
「「「……」」」
素直じゃない人…と皆は思った。
「ところで、なぜ私達にだけ香が効かなかったのだ…?」
どうやら葛葉は危険な存在ではないらしいと悟った保利は彼女に尋ねる。

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