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爆乳☆陰陽伝
官能リレー小説 - 時代物

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爆乳☆陰陽伝 20

後は陰陽師という身分を得て、修行に邁進するのみ。
そう、葛葉はすでに晴士の試験合格を確信していた。
みなが慌てふためく中、化け蟹を倒したのだ。これだけの才能を放置しておくことはできまい。
葛葉は人間以上に人間のことをよく知っていた。
「ふふふ・・・せいぜい頑張って強くなっておくれ。期待しておるぞ、我が愛しい晴士よ」
彼女はそう言い残し、風とともにその場から姿を消した。

 ☆ ☆ ☆

「晴士よ。ちょっとこの書簡を氏家殿のところへ持って行ってくれ」
「はい!かしこまりました」
学士試験から数日――――。
あれから色々あったものの、葛葉の読み通り、保利はもちろん晴士も見事試験に合格・・・念願の陰陽師となっていた。
さらに陰陽寮(朝廷に仕える陰陽師達をまとめる組織)は試験の結果を無効とはせず、試験に合格しつつも化け蟹にやられた者、あるいは無様に逃げ出した者も合格とした。
陰陽師になる実力があったとしても、いきなり独り立ちできる訳ではない。
先輩陰陽師の指導のもと、少しずつでも鍛えていけば良いのだ。
ちなみにあの騒ぎで死者はただの1人も出なかった。
その代わり、快楽と引き換えに霊力を吸われ、衰弱した者が数多く出た。
合格者の中にはあの一件で何かに目覚め、合格を辞退した者も出たとか。
彼らがまっとうな道を進んでいることを晴士は願わずにはいられなかった。

陰陽師となった晴士は今、初老の陰陽師の元で指導を受けながら働いている。
人に害をなす妖(あやかし)の調査、妖を封印した祠(ほこら)や物品の検査、低級な妖との実戦訓練。
どの仕事も決して楽ではなかったが、晴士は充実した日々を送っていた。
と言うのも、あの化け蟹の一件以来、彼は人並み程度には術を使えるようになったのだ。
あの実戦で眠っていた才能が開花したのか、あたかも乾いた綿を水に浸したかの如く、どんどん実力を増していく。
それに合わせて彼の式神であるコンも強くなり、修行に関して言えば順調と言って良かった。
ちなみにあの化け蟹の化身である娘も、今や晴士の式神となっていた。
コンと保利と共に腰が抜けるほど抱かれ、身も心も彼に屈してしまったようだ。
ちなみに名は“カイ”と付けた。
“蟹”の字の漢風読みだ。

新たな式神も得て今や全てが順風満帆、気分は天にも昇る心地だろう・・・と思いきや、実はそうでもない。
今まで苦しんできた悩みが解決した代わりと言わんばかりに、別の問題が晴士を悩ませていたのである。
その1つが・・・。
「うっ・・・」
廊下の向こうから近付いて来る集団、その中心にいる者の姿を目にした途端、晴士の動作が壊れた玩具のようにぎこちないものへと変わる。
その者・・・保利もまた晴士の存在に気づいたようで、その表情は同じく硬い。
あの日の事は朧気(おぼろげ)にしか覚えていない保利であったが、晴士に自分の正体を知られてしまった事だけははっきりと覚えていた。
その後の事は夢か現(うつつ)か幻か・・・といった具合だが、己の身に起きた変化(アソコの妙な痛みと何かが挟まったような違和感)と朧気な記憶から、この変調の原因が晴士との“あの行為”にあるという事は何となく察していた。

そんな事もあって、あれ以来お互いに顔を合わせる度に気まずくなり、まともに口すら利いていないのだ。
おまけに・・・。
「オイ落ちこぼれっ!なに保利さんを睨みつけてんだ!?」
「たまたま化け蟹を倒したからって調子に乗るなよ!?」
「どうせお前の事だ。大した活躍もしてないのに、さも自分が倒したかのように上役に吹聴したんだろう」
「行きましょう保利さん!こんな男に関わるとロクな事になりませんよ!」
「そうです、そうです!」
保利の取り巻き連中が邪魔して会話する機会すら与えてくれないのだ。
かつて“零能者”とすら言われていた晴士の落ちこぼれっぷりは知れ渡っていたから、彼らは晴士が保利の戦果に便乗して手柄を横取りしたと思っているのだ。
だが、もちろんそんな事は表面的な理由に過ぎない・・・根本にあるのは“嫉妬と焦燥”である。
自分よりずっと下だと思っていたヤツが“実は実力者でした”となれば、反発して認めたくないと思うのは、ある意味では当然だ。
まったく虚しく浅ましい人間の性(さが)である。
だが、そんな連中の為に晴士は未だに保利と仲直りする機会を持てずにいた。

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