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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 99

 博多地方の熱い祭りと夜の男女交合を歌った猥歌だ。
 古来、日本の祭の多くが乱交を伴ったと言われており、それだけなら別段珍しくもないが、このような形で舞台で歌い踊るのはやはり前代未聞である。
 素面で聞けば赤面するような歌詞だが、ずんずんと腹に響くようなこの大音響の中では、聴衆の官能をたまらなく刺激するのだ。

 長山太夫は一通り歌が終わると三味線の独奏を始めた。
 三味線を頭の後ろに抱え上げて背でかき鳴らし、喝采を浴びると、そのまま股割り!
 長い脚は前後にガバッと百八十度開ききり、舞台の床にぴったりと尻がついた。
 客は割れんばかりの拍手を太夫に浴びせかける。
 興が乗ってきた長山太夫は、三味線の棹や天神をまるで愛しい男の男根でも扱うようにいやらしくしゃぶり始めた。
 ちろちろ…。ぺろぺろ…っ。
 唾液の跡をぬめらせながら棹を這い回る舌使いに観客はさらに熱狂する。
「オオオオォォォォォォ…!!!」
 その興奮の熱気に煽られて、今度はがばりと開いた股の間に三味線の太鼓部分を挟み込み、棹を右手でシコシコとしごく。
 腰を突き出してぐりぐりと回しながら、空いている左手は自らのおっぱいを取り出して激しく揉みしだいた。
「はぁ…はぁ…。あ…あふぅっ!!」
 長山太夫は興奮してもはや周りが見えていないという体であった。
 踊り子の男女はいつの間にか二人一組となり、薄衣を脱ぎ捨てて身体を絡み合わせながら抱き合う。互いの片脚を相手の股の間に差し込んで腰を前後に動かしながら踊っている。
「はぁん…。こんなんじゃダメ…。我慢できないぃ!!」
 突如、太夫は叫ぶと三味線を放り出し、法被も脱ぎ捨てた。
 そして神施祭座亜(しんせさいざあ)を弾いていた女を突き飛ばすと、上に飛び乗った。その手には晏譜(あんぷ)から伸びる太い紐が握られている。
 太夫はその太い紐を身体に巻きつけて股に挟み込むと、自ら激しく前後に擦り上げた。
 グシュグシュグシュ…ッ。
 濡れた割れ目には紐ががっちりとはまり込み、一人緊縛状態である。
「ああん、もうイグッ! イッちゃうのおおぉぉ!!」
 ぷしゃっ!! じょろじょろじょろ…。
 遂に絶頂に達した太夫は、感極まって締め込みが食い込む割れ目の奥から尿(いばり)を垂れ流した。
 よほど溜め込んでいたのか、かなりの量の尿である。周囲が水浸しになってゆく。

「あっ! バカモン! エレキテルを使っているところに水なんぞかけたりしたら…!!」
 事態に気づいた藤兵衛が桟敷席から身を乗り出して叫んだ時にはもう遅かった。

 ビリビリビリビリビリ…ッ!!
「はぎゃう"う"う"う"!! むがぐあぶいふぁげぐッッッ!!!!!」
 たちまち感電し、長山太夫の全身に凄まじい衝撃が走る。太夫は痙攣しながら意味不明の叫び声を上げ続けた。
「…あ"、あ"、あ"…。ぐぎゅうっ!」
 何か呟くと、そのまま彼女は鍵盤の上から床にばったりと倒れ込んで動かなくなった。
 文字通り『昇天』である。
「嗚呼、太夫様〜っ!!」
 踊り子たちはそれに釣られて叫びながらバタバタと倒れてゆく。客の娘たちも同様である。
 興奮が極限状態に陥り、脳貧血を起こしたのだ。
 しかし、それでも楽団員は音曲を止めようとしない。太鼓と三味線の音が響き続ける中、するすると幕が降りて終幕となった。

(何なんだ、これは…?!?!)
 家竜、藤兵衛、大二郎も、楓と雅も自分に理解不能なものを目の当たりにした…という感慨でひたすら言葉を失っていた。
 それもそうであろう。この演者と観客の異常な興奮や失神は現在のロックコンサートに近い。いわば二百数十年ほど時代を先取りしていたわけだ。
 しかし、中華四千年の歴史の中には大いなる先駆者がいたのである。

 唐代の中国において修行僧が編み出した『六苦』という修行法が存在した。
 禅僧・得美寿(えるびす)は己の存在を石に例え、気の停滞を石に生える苔に例えた。そして己を常に極限の場において苔むさぬよう常に転がり続けよと教えたのである。
 その方法とは修行僧が数人で楽団を結成して『義他阿』や『瞑抄』といった楽器を携え、六つの苦行をしながら全国行脚の旅に出るというものであった。

 一.楽器で巨大な音を出して絶叫して喉と耳を鍛える
 二.舞台で暴れて楽器を壊すことで身体を鍛える
 三.巡業旅行を繰り返すことで忍耐力をつける
 四.ボロ布を身にまとい寒さに強い身体を作る
 五.阿片など薬物を摂取し瞑想することで体内から余分な脂肪を落とす
 六.熱狂的な観客との間で男女和合を極める

 以上のことをひたすら繰り返し、得美寿は巡業先で四十二年の生涯を終えたと伝えられる。
 ちなみに現在『ロック』の名称は、この『六苦』からきたものであることは論を待たない。
                        (太公望書林刊『大中国音楽秘史』より)

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