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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 10

和馬と護衛役が大立ち回りを演じている間に、家竜と楓は、誘拐犯たちが女たちを輸送する為に手配した、舟を乗っ取った。
「オイ!!助けに来たぞ!!早く此処から出ろ!!」
「ああ!!竜さん!!」
家竜が女たちが閉じ込められていた船の船室の扉を開けると、其処には家竜の恋人の一人である珊瑚が居た。

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 ここで物語は五日前の早朝に遡る。
「え〜魚はいらんかね〜! アジにスズキにタイ、カツオ〜! 何でもあるよ〜っ!!」
 まだ薄暗い長屋に、天秤棒を担いだ珊瑚の威勢のいい声が響き渡っていた。
 頭はひっつめ髪を上で止めて、ねじり鉢巻きを巻いている。上半身は法被。一回り小さいのを着て胸元で裾を縛ってあるので、豊かな胸の谷間が今にもはみ出しそうだ。
 そして下は男のような六尺褌をきりりと締め上げている。ふんどしの縦褌ががっちりと食い込むムチムチの巨尻が、動くたびにたぷたぷと揺れる。くらくらするような強烈な色気を発散していた。
 長屋の奥からぞろぞろと出てきた、いかにもガラの悪い男達。
 それもそのはず、ここは近所の子供が怖がって決して近寄らない鬼婆横丁にあるどぶ板長屋だ。
 ヤクザ、ばくち打ち、流れ者など、住人にまともな奴は一人もいない。
 そんな所にでも平気で魚を売りに来るのが珊瑚の度胸の良さだ。
「おう、姉ちゃん。カツオ一匹くれや! こいつをつまみに朝酒としゃれ込むか」
「へい毎度っ!」
「おいらにはタイをくれ」
「あいよっ!」
 ヤクザ連中が手渡す金は相場よりもずっと高額だ。皆、珊瑚の気風に惚れ込んでいるのでお駄賃付きなのだ。これがあるから止められない。
「へっへっへっ…。姉ちゃん、こっちのアワビは売ってくんねぇのかよう!」
 珊瑚のお尻を食い入るように見つめていた新参者の若僧が、ふんどしのスキマに指を入れた。
 ぬるんっ。
 若僧の指は、いきなり珊瑚の蜜壺の奥まで深く潜り込んだ。ねちゃねちゃと粘膜が湿った音を立てる。
 と、その時。
 ぶんっ!
 ドゴッ!!!
「おごおおおおっ!!」
 次の瞬間、珊瑚は身体を反転させ、担いでいた天秤棒がすごい勢いで激突する。後頭部を直撃された若僧は顔面からそのまま地面に激突した。
「あたしが売ってるのは魚だよ。その貧相なイワシを可愛がってくれる二枚貝が入用なら、そこいらの夜鷹にでも頼みな!」
「ぎゃっはっはっは…!」
 ぴくぴくと痙攣する若僧を見下ろして珊瑚が威勢のいい啖呵を切ると、周囲の男達がどっと笑い出した。

 半刻ほど後。
 上機嫌の珊瑚は、天秤棒を片手に町を歩いていた。
「へっへっへっ…今日もたんまり儲かったわ。これで刺青が全部入れられる!」
 珊瑚は愛しい人の名前と竜の絵を自分の肌に刻み込みたかった。十日前からこっそり彫師の家に通っているが、竜の瞳だけがまだ入っていないのだ。
「きゃああああ――っ!!!」
 珊瑚の耳に絹を裂くような女の悲鳴が飛び込んできた。
「おらぁ、お光! 俺達と一緒に来るんだ!!」
「嫌っ! 嫌ですっ! 助けてお父っつぁん!!」
 騒ぎを聞きつけて飛び込んでみれば、一軒のあばら家から娘が連れ出されようとしている。見るからにガラの悪いヤクザが入り口を取り囲んでいた。
 ドカッ! バキッ! ボコッ!
 珊瑚の振るう天秤棒が一瞬にしてヤクザを吹っ飛ばした。
「朝っぱらから穏やかじゃないねぇ…。寄ってたかって娘をいじめるなんざ、男のやることじゃないよ!!」
「な…何をこのアマァ! この娘は借金のカタにもらっていくんだよ! それが何故悪いってんだ?!」
「お前ら、どうせご定法に外れた利息とってあこぎな商売してんだろ?」
「何だと、いいからやっちまえっ!」
「へいっ!!」
 ヤクザ連中を仕切っている丹治の命令で、男達が一斉に珊瑚に飛びかかった。しかし珊瑚の腕っぷしの強さは尋常ではない。
 ある者は天秤棒にアバラを打たれ、ある者は顔面に蹴りをくらい、皆あっという間にのされてしまった。
「…残るはあんた一人だけど、あたしとサシでやる気はあるかい?」
 珊瑚に凄まれて、丹治は思わずたじろいだ。
「ちっ…! おいお前ら、いつまで寝てんだ! とっとと帰るぞ!」
「覚えてろよ!!」
 口ぐちに悪態をつきながら逃げてゆくヤクザを尻目に、珊瑚はお光を助け起こした。
「さぁ、もう大丈夫だよ」

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