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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 82

この二人の言葉に激昂したのか、お蝶は勢い良く反論する。
「てやんで!べらぼうめ!大人しく聞いてりゃつけ上がりやがって!!てめえらが裏で手を組んで散々悪事を行ってたのはお見通しなんだよ!!アタシの亭主を殺したことを忘れたとは言わせねえぜ!!」
「そうだ!そうだ!!」
「今この場で兄貴の仇を討ってやろうか!!?」
清水一家の博徒達は駒蔵と貝原の言葉に暴発寸前に成る。
「ご覧くださいお奉行!!この者たちの野蛮な振る舞いを!!そもそもこの者たちは、刑場に乱入した挙句勝手に逃亡した紛れも無き罪人!!この様な者たちの証言に一片の価値も御座いません!!」
「何だと!?」
「そもそも私と貝原様が罪を犯したと仰るが、一体全体何所にそのような証拠が有ると言うのです!?」
「そ、それは・・・」
駒蔵の言う通り、貝原と駒蔵が裏で手を組み行った悪事は、全て証言だけで証拠は無かった。
「い、イヤ。確か竜の兄貴が証拠を持ってくると・・・」
そう言う松五郎の声にも力は無い。
「フン!相変らず清水一家の人間は薄汚い奴バカリだ!いっそ泥水一家とでも改名したらどうだ?」
「「「「な!!」」」」
「悔しいか?悔しかったら証拠を見せろ!証拠を!!」
駒蔵の罵声が最高潮に達したその時。
「やかましぃやい! 悪党ども!!おうおうおう、黙って聞いてりゃ寝ぼけた事をぬかしやがって!!」
奉行と白洲の間を隔てていた御簾が突如として上げられ、中から奉行らしからぬ遊び人か傾奇者のような服を着た男が現れた。



「「「「「な!りゅ!竜さん!!??」」」」」
そう、其処に居たのは、数日前まで清水一家に下宿していた旅人の竜に他ならなかった。
余りの展開に清水一家の者たちはもとより、駒蔵と貝原まで呆然としている。
「おう!そんなに証拠が欲しけりゃ幾らでも見せてやりゃ!!」
そう啖呵を切ると家竜は、懐から書類の束を取り出し、まるで紙ふぶきのように白洲にばら撒いた。
その書類にはこの数日で楓が調べ上げた、駒蔵と貝原の悪事の証拠が、事細かに記されていた。
「な・・・何と言う事じゃ・・・」
もはや言い逃れ出来ないだけの証拠を目の前に突き付けられ、貝原の顔は死人のように青ざめ、ただ呆然と放心していた。
「分かったかべらぼうめ!!例えお天道様を欺けても、俺の背中の龍の眼を!欺く事は出来ねえんだよ!!」
そう言いながら片肌脱ぐと、そこには見事な龍の彫り物が描かれていた。
(因みに証拠を揃えたのは全部アタイです)
(うっ!上様!?まさかホントに刺青を彫ったりしてませんよね!?)
(何をしているのかと思えばこれがやりたかったのか・・・)
(は〜)
逆に横で控えて見ていた家竜の家臣たちは、そんな家竜の様子を呆れ顔で見ている。
「お、オノレえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!」
自分自身の身の破滅に逆上したのか、駒蔵は狂ったように叫びながら、家竜に向かって突進する。
だが、その無謀な突撃も、家竜の隣で控えていた大二郎と雅によって一瞬で終わりを告げた。
「ギャア!!」

バタリ・・・

「・・・・さて、貝原?まだ反論は有るか?」
「ははぁ!!畏れ入り奉りました!!」
所詮は官僚化した江戸時代の武士。博徒として修羅場を潜って来た黒狗の駒蔵とは違い、貝原の方は事ここに至って逆らう心算は無いようだ。
「うむ!では判決を言い渡す!町人駒蔵。通称黒狗の駒蔵はその罪大故。市中引き回しの上磔獄門!元代官・貝原左兵衛には御公儀より、追って切腹の沙汰があろう!引っ立てい!!」
その言葉と同時に奉行所の役人が貝原と重傷の駒蔵を引きずっていく。
「さて、清水のお蝶並びに清水一家の者共」
家竜が視線を向けると清水一家の組員が一斉に白洲に土下座した。
「た、・・・竜さん!イヤ!お奉行様!!お奉行様とも知らずとんだご無礼を・・・・」
「イヤ!悪いけど俺は奉行じゃないよ・・・せっかくなんでハッシーに頼んで変わって貰ったんだ」
「「「「「ハ?」」」」」
事情の分からないお蝶や清水一家の組員の頭の上に「?」マークが表示される。
(奉行でこれじゃあ、実は俺将軍ですって言ったらこいつ等腰抜かすだろうな・・・イヤ、むしろ嘘だと思われるかな?)
家竜は内心苦笑を浮かべる。
「まあ、お前らは旅人の竜って名前だけを憶えてくれてりゃ良いって事よ」
清水一家の面々は、混乱しながらも、家竜の言葉に素直に肯いた。
だが、仮にも男女の関係に成ったお蝶だけは、どこか悲しげな眼で家竜を見詰めていた。
(悪いなお蝶・・・)
家竜の方もお蝶のこの視線にさすがに罪悪感を感じたが、彼女の事を想えば正体を明かさない事がこの女の為だろう。

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