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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 75

「なんだ?敵の新手か?」
「どうやら博徒ではなく侍のようですのう・・・じゃが、陣屋の役人はここに居るのが全てのハズ・・・はて?」
「うえ・・・いえ、竜吉さん!これ以上は無理です!お蝶さんを助けて、後はバラバラに逃げましょう!」
大二郎にしてみれば、こんな場所で家竜に万が一の事があれば大変な事に成ると気が気ではないのだろう。家竜に向かって必死に諫言する。
「ハア?バカ言うんじゃねえよ!!まだ駒蔵も代官もブッ飛ばしてねえんだぞ!?なのに尻尾撒いて逃げろってえのか手前は!?」
「お怒りは重々承知しています!ですがここは江戸では無いのです!!ここが江戸なら大岡様の助力で如何とでも誤魔化せますが、この興津宿では手勢も限られます!!」
主従が言い争っている間にも騎馬の一団は、足元の博徒やコワッパ役人共を蹴散らすように家竜達の方へと近づいて来る。

 先頭を駆けてきた騎馬の武士が書状を手に叫んだ。
「駿府町奉行・橋爪石見守様のご出役である! 代官・貝原左兵衛! 黒狗の駒蔵! 年貢横領と収賄の罪で勘定奉行の命によりお前達を捕縛する!! 神妙にいたせ!! 逆らう者はみな召し捕るぞ!!」
 これには一同ギョッとした。
 代官所の者はたちまち土下座してかしこまった。
 騎馬に蹴散らされて逃げ惑うヤクザの群れを、後ろから来た小者が縄をかけて次々と召し捕ってゆく。

「どうやら楓様の持っていた書状が役に立ったようですね…」
 刀を下ろした雅は、にっこり微笑んだ。
「一体何の書状だって?」
 家竜が駆け寄ってくる。
「あら、覚えていらっしゃいませぬか? 楓様に上様直筆の書状を渡しておいたそうではないですか」
「そんなことしたっけか…。ああ、そうそう! もしもの時のために書いてやった!」
 しばし考え込んだ家竜はようやく腑に落ちて膝を打った。

『此者 長年に渡り 我が身辺に 仕える者也
 此書面 差し出したる時 此者の言ハ 我の言と思ひ
 真摯に対処 致される様 願ひ上げ候
                征夷大将軍 徳川家竜』

 楓は昨夜、この書状を見せて協力を依頼したのである。

「さぁ早く逃げましょう! 我々も捕まると後々面倒ですぞ!」
 怪我の痛みが限界に来て動けなくなった松五郎を抱え上げると、大二郎がうながした。
「そうそう。面倒な仕事は役人に任しておきなさい!」
 すかさず藤兵衛が口を挟む。
「ちっ! 本物の将軍よりも書状の方が役に立つなんて…とんだお笑い種だ!!」
 家竜は刀を収めると、苦笑いをしながらお蝶一家の連中と共に一目散に逃げ出した。

「ふ〜・・・どうやら上手く逃げられたようだな・・・」
家竜は周りに追手の気配が無い事を確かめると、そう言って不敵な笑みを浮かべる。
「竜吉さん・・・何の関係も無いアンタがワザワザ助けに来てくれるなんて・・・本当にありがとうございやした」
お蝶は深々と頭を下げる。
「なあに!イイって事よ!ま、アンタにゃ一宿一飯の恩義ってもんが有るからな!」
家竜にとってこれ位の騒動は日常茶飯事だったし、何より女好きで意外と正義感の強い彼には、お蝶のような美女が陰謀に巻き込まれ処刑されるなど、絶対に許せない事なのだ。
「それにしても他の奴等は無事に逃げ切れたのかね?」
刑場での捕り物のドサクサに紛れて、お蝶の腕を握ったまま闇雲に逃げ出したので、何時の間にか藤兵衛や大二郎や組の連中と逸れてしまったようだ。
(爺さんは大丈夫だと思うが、大二郎の奴は要領悪いからな〜・・・案外捕まっちまってるかもな・・・)

 家竜が大二郎たちのことを心配していると、後ろでドサリと音がした。
 見れば、お蝶が草むらで気を失っている。
 かよわい女の身で過酷な拷問を受け、極度の緊張と羞恥、そして死の恐怖にさらされ続けたのである。
 ほっと気が緩んで倒れてしまうのも無理のないことであった。
「しょうがねぇ…いっぺん清水一家に戻って皆が揃うのを待つか…。よっこらせ…っと」
 家竜がお蝶を抱き上げると、肌襦袢一枚の大きく開かれた胸元から豊かな胸乳がこぼれ落ちる。
 思わず、
(ゴクリ…)
 と生唾を飲み込む家竜。
「おっとっと…いけねぇ。ヨダレなんか垂らしてる場合じゃねぇぜ。こんなもん見てたら目の毒だ!」
 お蝶を背負うと家竜はとぼとぼ歩き出した。
 目の毒は背中に遠ざけたが、今度は背中に当たる乳房の感触と両腕に当たる柔らかな尻の感触がたまらない。
 家竜は不覚にも下帯の中でどんどん強張りが増してゆくのを感じていた。
 このままでは歩きにくいことこの上ない。
 女に関しては百戦錬磨の家竜でさえも惑わせる、艶かしいお蝶の身体がいけないのだ。全く女人というものは罪な生き物である。
 家竜の歩く道の先には大きな夕陽が傾いていた。

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