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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 74

「刑場破りたぁ、大変なことをやってくれたな! これでお前らも打ち首だぞ!」
 そう言いながら現れたのは黒狗の駒蔵とその子分たちである。
 群衆の中に潜んでいたのか、役人たちが頼りにならないとわかった途端、お蝶を奪回すべくぞろぞろと出てきたのだ。
 ずらりと並んだ総勢は二百人ほどもいるだろうか? 壮観な眺めだ。
 駒蔵の脇には裏切り者の明神の常吉が控えている。
「おい松五郎、おめえよく生きていたな! あん時、鉛玉をくらわして川に投げ込んでやったのによ! もう一度あの世に送ってやるぜ!!」
「何をっ! この裏切り者め! お前の首根っこをへし折ってやる!」
 常吉の挑発に負けじと松五郎が必死に言い返すが、担いだ丸太を杖にしているような状態だ。周りから子分たちが身体を支えている。
「おい手前ら、皆で引導を渡してやんな!!」
「おおおおおおっっ!!!!」
 駒蔵の子分たちが雄叫びを上げながらドドド…と家竜たちに襲いかかってゆく。

「ようし松五郎、ここは俺らに任せろ!!」
「手前ら、鋒矢陣(ほうしじん)を取れぇぇい!!」
 ぞろぞろぞろ…っ。
 松五郎の命令でお蝶一家の連中はぴたりと固まって楔のような陣形を取った。
 かの『三国志』で言うところの少数の味方を密集させて敵中突破を図る際の戦法である。
 その先頭は家竜を真ん中に、左右に大二郎、藤兵衛、雅がずらりと並んでいる。
 四人は腰からスラリと抜き放ち、くるりと刃の向きをチャキッ、と裏返した。
「皆、わかってるだろうが相手は単なるヤクザだ。峰打ちで勘弁してやれ。殺すんじゃねぇぞ?!」
「十分にわかっておりまする」
 控えめに雅が答え、残りの面々が軽く頷いた。
「それじゃ行くぜ! うおおおおおお―――ッ!!」
 お蝶一家も大軍に向かって突撃する。

 敵味方入り乱れての大乱戦となった。
 バキッ!! ドゴッ!! ドカッ!!
 駒蔵一家の手下どもがバッタバッタと倒されてゆく…。
 家竜が、大二郎が、藤兵衛が必死に刀を振るうが、あまり思うようでない。
「上様! これじゃキリがありませんぞ!」
「そうじゃ! こんなこと続けておっても老体にこたえるだけじゃわい!」
 大二郎に続いて、息を切らしながら藤兵衛が叫んだ。
 刀を裏返して打つ峰打ちとはいえ、要は重い鉄棒で殴るのと同じである、うかつな場所を打てば相手は死に至る。
 そこで手足を叩き折って戦闘不能にするのだが、何分動いている相手であるから難しい。
 卓越した剣技の持ち主でも手加減というものは難しいのだ。
「そうじゃ! ワシに良い知恵があるぞい!!」
 そう叫んだ藤兵衛はお蝶が磔にされていた、折れた台の根元に飛び乗った。

「皆の者、静まれ!! 静まれえぇええ〜〜〜〜〜いいっっっ!!!」
 藤兵衛の大音声が響き渡る。
 皆、その大声にびっくりして静まり返った。老人の不思議な行動を見守っている。
 印籠を懐から取り出してかざしながら藤兵衛は続けた。
「ここにおわす御方をどなたと心得る! 天下の征夷大将軍、徳川家竜公にあらせられるぞ!!」
 指さす先には家竜がいた。しかし、当の家竜は刀を手に駒蔵の手下の一人をげしげしと足で踏みつけている。
 その姿はどう見ても気品あふれる征夷大将軍というよりも、旗本くずれの三男坊といったところだろう。
「頭が高い、頭が高い!! 控えおろう〜〜〜!!!!」
「………………」
 藤兵衛の発言に駒蔵も駒蔵の手下もぽかんとしている。
「ふざけんな!! そんな下品な公方様がいるけぇ!! 猿芝居に付き合ってる暇ぁねえんだよ!!」
 駒蔵が怒声でやじり返すと、手下どもは再び戦闘を開始した。
 刑場は再び埃舞う喧騒の中につつまれる。
「こらっ! ワシの話を聞けっ! 聞かぬかっ!! …聞かぬとこうじゃぞ!!」
 無視されたことですっかり怒り心頭に発した藤兵衛は、台から飛び降りて手下どもに斬りかかってゆく。
「この馬鹿者どもが〜〜っ!!!」
 バキ、バキ、ベキ、ボキ!!
「うげぇ〜〜っ!!」
 手や足をへし折られた駒蔵の子分が次々と転げまわる。
「さすが爺さん、元気だな〜!! まったくよくやるぜ! 俺たちも負けちゃいられねぇな!」
 その様子を見ていた家竜も俄然張り切って刀を振るう。

 ドドドドドド…ッ!!
 今度はそこへ騎馬の一団が駆けつけた。どうも別の役人らしい。
「者ども! 静まれ!! 静まらんか!!」

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