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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 73

 いきり立った家竜は市蔵の襟首を掴み上げた。
「ま、松五郎兄ィは…和田島の長兵衛親分のところに加勢を頼みに行く途中で鉄砲に撃たれて…!!」
「それで助かったのか?」
「ええ、まぁ…。ゆんべの夜中、松五郎兄ィは傷だらけになって運ばれてきやして…。『俺はもう動けねぇ、あの兄さんを呼んでこい』って言われて探し回ってたんでさ」
「そうか…よしわかった! とっとと刑場まで案内しろ!!」
 顔も洗わず大急ぎで着物を着て刀を差した家竜。
「大二郎! 爺さん! 後からついてこい!」
 …と叫ぶなり、市蔵を引きずりながら飛び出していった。
「やれやれ…」
 残された大二郎と藤兵衛は、ふうとため息をついて互いに顔を見合わせた。
「こうなっては致し方あるまい。大二郎、ひと暴れするぞ?」
「ええ、わかっております」
 鉢巻を巻いてたすきをかけながら大二郎が答える。
「…私もお供いたします」
 すっと障子が開き、奥の間から雅も顔を出した。既に身支度を整えている。
 楓はまだ戻っていないが、置き手紙を残しておけばいい。
 飛び出していった家竜を追いかけ、三人も立ち上がった。
 いよいよ腕の見せ所である。

 そして舞台は再び、刑場に戻る。
「うううう…っ」
 磔にかけられて大の字に固定されたお蝶。
 既に気力も涙も尽き果て、がっくりとうなだれたまま小さく呻いている。
 呼吸をする度に豊かな乳房が大きく上下に動き、限界まで広げられた両脚の間に息づく女の証が大きく口を開け、ひくっ…ひく…っと収縮を繰り返していた。
 ざわ…ざわ…。
「いよいよお仕置きか…」
「ああ…」
「勿体無い話だぜ…見ちゃいられねぇ…!」
「見目麗しい観音様が成仏なさるってのに見届けなきゃバチが当たるぜ!」
 竹垣の向こうから覗く大勢の見物人たち無責任な放談を繰り返しながらも、その視線はただ一点に注がれている。
 その前に槍を持った人夫が左右から歩み寄った。
 カチャッ!
 お蝶の目の前で二本の槍が交叉した。
「ひいい…っ!!」
 眼前に迫る死の恐怖にさしものお蝶も青ざめる。
 やがてガタガタと震えだした。
「アリャ、アリャ!」
 槍を罪人に突き刺す前に人夫が叫ぶ掛け声である。
 その声を聞いた瞬間、お蝶は頭が真っ白になり気が遠くなった。
(ああ…もうおしまいだわ…。死ぬ前にやっぱりもう一度…竜吉さんに…会いたかった…)
 …と思った、その時である。
「うおおおおお〜っ!! 姐さ〜ん!! 助けに来たぜ〜っ!!」
 観衆のざわめきを引き裂いて男たちの雄叫びが聞こえてきた。
 お蝶の子分たちである。
 中には藤兵衛、大二郎はもちろん、市蔵に支えられて包帯だらけの松五郎までもがいた。
「やいやいやい、そのお仕置き待ちやがれ〜っ!!!」
「?!?! むごごっ!!(…た、竜吉さんっ!!)」
 そしてその先頭で大声を張り上げる家竜の姿を認めた途端、お蝶は大きな衝撃を受けた。
 そこにいるはずのない男が自分を助けに来てくれたのである。
 しかし次の瞬間、自分が素っ裸で磔にされていることにもあらためて気がついた。
 最も見られたくなかった人に一番恥ずかしい姿を見られているのである。
 嬉しさと驚き、そして羞恥心で頭に血が上り、かーっとなったお蝶はそのまま気を失った。

「てめぇら、邪魔だ邪魔だ〜ッ!!!」
 いきなり飛び出してきた一団に驚いて左右に避ける聴衆たち。
「ええい、お前ら何をしておるか! 賊はたかだか十数人! 召し捕ってしまえ!!」
 馬上から代官が鞭を持って指図する。
「…わああ〜っ!!」
 棒を持った小者たちが一斉に飛びかかり、取り押さえようとする。
 家竜は一番先に打ちかかってきた小者をあっさり殴り倒し、その棒を奪い取ると逆に役人たちを蹴散らした。
 バキッ! ドカッ!
 その隙に竹垣に取りついた藤兵衛がさっと一瞬、刀を光らせる。
 するとたちまち竹垣は崩れ落ち、市蔵らお蝶の子分たちが刑場になだれ込む。
「うおおおおおお!! 姐さぁ〜ん!!」
 包帯だらけの松五郎がぶんぶんと丸太を振り回すので、十字架の辺りには誰も近づけない。
「ヒヒヒ〜ン!!」
「うわわっ!! ぎゃあっ!!」
 代官は驚いて後足立ちになった馬に振り落とされ、したたかに腰を打ちつけた。
 勢いに総崩れとなった役人たち。代官は小者に背負われて退却しながら、鉄砲衆に命令した。
「面倒くさい! あやつらを鉄砲で撃ち殺してしまえ!!」
 号令と共に鉄砲を持った一団が飛び出して、一斉に構えた。
 火縄に火をつけて射撃体勢に入った時。今度は編笠をかぶった雅が横から飛び出してきた。
「はあっ!」
 キン! キン! キン!
 鋭い気合と共に抜く手も見せぬ居合の技で鉄砲の銃身を切断してゆく。
 そのまま突進した雅は、お蝶が磔にされている十字架に切りつけた!
 ビシッ!!
 みし、みし、みし…。
 根元を切り裂かれた十字架が大きく傾いた。メリメリと音を立てて地面へと倒れ込む。
「どりゃあああ〜っ!!」
 倒れかかる十字架を、大二郎がその巨体で抱き止める。
 すかさず雅が駆け寄って大の字にされたお蝶の手足の縄を切り落とした。
 雅はお蝶の濡れた身体にはらりと着物をかけて抱き上げてやる。
 流れるような見事な連携プレーである。

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