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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 64

「お!お待ち下さい上様!仮にもこの国の武門の頂点たる征夷大将軍とも在ろうお方が、その様な場所に気安く行かれるなど・・・それに父上は去年四十も年下の女性と再婚なされたバカリではないですか!少しは御慎み下さい!!」
一人取り残された若い男は、そう言って若者と老人の裾を必死で掴む。
「馬鹿野郎!今の俺たちは、厄落としにお伊勢参りを思い立ち東海道を旅する江戸の大店のご隠居と、その護衛兼世話係の町人竜と大二郎なんだぞ!もし誰かに聞かれてたら如何する心算だ!!・・・下手をするとそのせいで厄介な事に成るかも知れんのだぞ」
家竜は真剣な表情で後ろの方の声を潜める。
「も!申し訳ございません!うえ・・いえ!竜さん!」
(そうだった!ああ・・・何という事だ!私の短慮のせいで上様を危険にさらす所だったなんて・・・)
「うむ!分かったか・・・つまり!周りの目を誤魔化す為にも今夜は、パーッと!遊ぶぞ!!」
「なるほど・・・そんな訳有るか!!」
根が単純な大二郎は、一瞬説得されそうに成るが、スグに理屈が変だと思い直す。
「相変らずお堅い石頭だのう・・・とてもワシの子とは思えんわい。ワシがお主の歳の頃には、剣の修行の為全国を武者修行する傍ら、土地土地に女を作ったもんなのにのう・・・自慢じゃないが、腰に差した刀で男を切るよりも、自前の刀で女を刺した方が遥かに多いい位なのじゃぞ!!・・・」
「ハハハ!そりゃあイイや!!」
老人の言葉に家竜は楽しそうに笑う。
恐らく彼が60を越えたらこの老人のように成って居るだろう。実に似た者師弟である。
(・・・・本当にこの人私の父親なのだろうか?)
大二郎の顔立ちは、父親の秋山藤兵衛(アキヤマ トウベエ)の若い頃にそっくりだそうなので、疑いの余地は無いのだが、日々自分の奥手でクソ真面目な点を主君である家竜や父であり剣術の師匠である藤兵衛にからかわれている大二郎は、ついついそんな事を思ってしまうのだ。
「よ〜し!今夜は飲みまくるぞ!」
「おう!」
こうしてやたらとハイテンションな老人(父親・藤兵衛)と青年(主君・家竜)に引きずられ、大二郎は興津の色町に引き摺り込まれたのであった。



「さあ!ハッタ!ハッタ!張って悪いは親父の頭と言いますが!なあに、それだって一向に構いやしません!早く張らないと締め切っちゃうよ!!」
「よし!俺はピンゾロの丁に一両!」
「あっしは半に二両!!」
その夜家竜一行は知り合った遊女に誘われて、興津の色町の一角に在る賭場に来ていた。
「う・・・いえ竜さん!もう止めましょうよ博打なんて!!」
「何でえ大二郎!!今ココで止めたら男が廃るってもんだぜ!!」
「そうじゃ!一時は勝ちが五十両を超えたんじゃぞ!!負けっ放しで終われるか!!」
「これ以上負けたら名古屋まで辿り着けなく成ります!!今ならまだ間に合います!!どうぞご自重下さい!!」
大二郎の必死の諫言も虚しく家竜は最後の大勝負に打って出る。
「ピンゾロの丁に有り金全部だ!!」
「どちらさんも、ようござんすね?」
 バッ!
 壺振りが壺を開けて賽を見せる。
「…九二の半!!」
 その瞬間、落胆のため息と歓声で賭場がどおぉっ…とどよめいた。
「はいはい、ごめんなさいよ!」
 胴元が負けた側の木札を掻き棒で掻き取っていく。
 家竜の前に積まれた木札も全部持っていかれて、後には何も残らなかった。
「………………」
 あまりの状況に思わず固まってしまう三人。
 大二郎はもう気が気ではない。
(上様! 一体これからどうするおつもりですか?!)
(馬鹿者が! だからワシがあれほどよせと言ったのに…!!)
 左右からひそひそ声で勝手なことを言う二人を無視して家竜は押し黙っていた。
「はっ!!!」
 バンッ!!
 家竜の手が叩きつけられると周囲の畳がばぁっと持ち上がった。
 これぞ楓直伝の畳返しの技だ。
「うわわっ!!」
「な…何しやがるんでぇこの野郎!! …ん?」
 見れば、畳が持ち上がった下には床板がなく、さらしを巻いたチンピラがキリを持ったままうずくまっているではないか!

「見ろ! こいつぁイカサマだ! 壺振りが壺を下ろした後で、畳の下からキリで突いて賽の目をいじっていたんだ!! さぁ、とっとと今まで巻き上げた金を返しやがれ!!」
 家竜は勝ち誇ったように叫ぶ。
「…ほう。兄ちゃん、おいらの賭場にいちゃもんをつけようってのか?」
 のっそりと出てきたのはでっぷりと太った醜い男だ。
 後ろには目つきの悪い用心棒たちが肩をいからせて睨みをきかせている。
「この町でお代官様から十手を預かる出歯亀の金蔵に恥かかせた奴がどういう目に合うか知ってて言ってるんだろうな?!」
 金蔵が顎をしゃくると、チンピラと用心棒が三人の周りをぐるりと取り囲む。
「くっくっく…。喧嘩を売った相手が悪かったな。俺はドスより恐ろしいぜ!!」
 懐手のまま不敵に笑う家竜。
(こんなチンピラ相手じゃどうってことないぜ。楽勝だな!!)
 家竜がそう思った瞬間。
「ちょっとタンマじゃ!!」
 藤兵衛がいきなり叫んだ。
 両手で家竜と大二郎の首を掴んで引き寄せると、ごにょごにょ相談を始めた。

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