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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 57

 岩風呂には藤兵衛が倒したくノ一たちの死体がぷかぷかと浮いている。
 その口や股間からは大量の血が流れ出し、三人が立つ温泉はすっかり血の池と化していた。
 家竜と大二郎は目を塞がれて攻撃を避けるのがやっと。
 藤兵衛は激しい跳躍で全身に淫夢香が回り過ぎて身動きが取れない。
 くノ一たちの攻撃を二度までも退けたものの、刀折れ矢尽きた三人であった。
「どうした、家竜! 悪あがきもそこまでか?!」
 菖蒲は勝ち誇ったように勝利の笑みを浮かべた。それに合わせて椿と桔梗が笑う。
(ちきしょうっ! もはやこれまでかっ?!)
 家竜は何か起死回生の策はないかと必死で考えた。
 しかし目も見えず武器も持たない今の自分では敵と刺し違えるのがやっとだろう。とても生き残る自信などなかった。
(三人仲良く冥土に行けるのがせめてもの幸せか…。あぁ、死ぬ前に楓ともう一発やりたかったなぁ…!)
 そんな諦めにも似た考えがふっと頭をよぎる。
「それっ! こいつらを地獄に送ってやれ!!」
 菖蒲の合図と共に、生き残りのくノ一たちが飛びかかろうとした瞬間だった。

 ドシュドシュドシュッ!!
 大量のクナイが月の光に閃いた。
 くノ一たちの背中にたちまち突き刺さり、ハリネズミのようになる。
「ぎゃあああっ!!」
「うぐぐっ!!」
「ぐはっ!!」
 ブシュッ!! ズバッ!! ザンッ!
 そして背後からの攻撃によろめいたくノ一が、一陣の風と共に次々と切り裂かれてゆく。
 ある者は首を切り裂かれ、びゅーっ! と鮮血を吹き出す。またある者は脾腹からどばっ! と臓物を飛び散らせて、ばたばたっ…と倒れてゆく。
「な…何奴っ?!」
 奇襲をかろうじて逃れた菖蒲が振り向くと、そこに忍び装束の楓が立っていた。
「上様には、指一本触れさせないよっ!!」
奇襲攻撃によって全ての部下を失った菖蒲は、鬼の形相で楓を睨む。
「くッ!この小娘が!!」
「降伏しなさい甲賀の菖蒲!!これ以上の狼藉は、甲賀忍軍全体の幕府への反逆と見做すわよ!!」
「フン!伊賀の小娘が偉そうに!どちらにせよこの任務!失敗すれば命は無い!成らばせめて!!」
菖蒲はそう言うと忍び刀を逆手に持ち、家竜の懐に飛び込んでいく。
「上様!危ない!!」
(ちっ!何も見えねえ・・・イヤ!)
「な?!」
菖蒲の刃が突き刺さるその時、家竜はまるで見えているかのようにその刃を避けた。
「グハ!」
そして次の瞬間咄嗟に楓の放った手裏剣が、菖蒲の急所に突き刺さり、くの一の命を速やかに断ち切った。
「上様!大丈夫ですか?」
「ああ何とかな・・・だが、目が開かねえんだ」
「これは・・・忍法乳時雨(ちちしぐれ)ですね。甲賀忍軍のくの一は、幼い頃から食事と一緒に毒を少量ずつ飲み、毒薬に耐性を付けます。同時にその事によって彼女たちは、血も肉体も毒薬と化すのです・・・当然母乳も・・・」
「な!じゃあ俺の目は?」
「ご安心下さい。毒を操る者は、同時に解毒の方法も常に用意しています。彼女たちの持ち物を調べれば解毒薬が出て来るでしょう」
「ほ、本当か?」
家竜は楓の言葉に安堵の溜息を漏らす。
「ええ・・・しかし、この目でよく甲賀の菖蒲の刺突を避けられましたね・・・」
楓の疑問に家竜は苦笑し答える。
「ああ、温泉で襲われたお蔭だよ。あの女焦ってたのか、ビチャビチャと派手に湯の音を立てながら近づいて来たからな。お蔭であの女が今何所に居るのか音で丸解りだったんだよ」
「成程・・・策士策に溺れる・・・無防備な所を襲う為に風呂に入っている時を狙ったのが、仇と成った訳ですか・・・」
楓はそう言うと憐れみを込めた視線を菖蒲の遺体に向けるのだった。

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