暴れん棒将軍 53
「さようでございますか。では私はこれで。支度が出来ましたらお呼びいたします」
仁兵衛はうやうやしく礼をすると席を立った。
「では、私もお先に入らせていただきます…」
家竜の諦めた様子を見て、雅はすかさず席を立った。
「お、おい! ちょっと待て…」
また家竜が何か良からぬことを考えているのを看て取った雅の反応は実に素早かった。取りつく島もない、とはまさにこのことであろう。
(ちっ…! これだから爺のお守りは嫌だったんだ。まったく楓といい雅といい、女というやつは余計なことばかりする)
仕方なく座った家竜は渋い顔をしてずずっと茶をすすり上げた。
ここは屋敷の裏手にある岩風呂。
おきぬが湯船に身を沈めた頃を見計らい、雅も脱衣場にやって来た。
藤兵衛の申し出は、雅にとって願ってもないことだった。連日の強行軍で箱根の峠を越え、ようやくたどり着いた三日目の宿。
涼しい顔はしていても疲れきった身体は汗ばみ、いささか気持ちが悪い。しかも箱根の関所で家竜に中出しされた量があまりに多くていくら拭っても拭いきれず、膣内から子種汁が漏れ出して下帯の内側はべとべとだった。
一刻も早く女陰を拭って蜜壷をよく洗い、胎内から子種汁をかき出したい。
中心部に薄黄色い染みがこびりついてごわごわになった下帯を手洗いしたい。
しかし家竜らと一緒に湯を使えば、その赤裸々な行為がすべて丸見えになってしまうだろう。
できれば殿方の見ている前ではしたないことはしたくない。
そんな女心を察して助け舟を出してくれた藤兵衛に深い感謝の念が湧き上がる。
雅は長い髪を頭の上で止めると、いそいそと着物を脱ぎ始めた。
帯を解いて着物を脱ぐとくるくると胸に巻かれたさらしを解いてゆく。日頃の拘束から解き放たれた豊かな胸乳がぶるん、と震えた。
下帯一丁となった雅は、腰の後ろの結び目を解いてそれも取り払った。汚れた下帯をまるめてこっそり手桶に入れると、手拭いを肩にかけ、岩風呂に歩いていった。
「…み、身堂様っ!」
雅の気配に気づいたおきぬは湯の中でこちらに背を向け、思わず身を固くした。
「大丈夫。言いそびれておったが、実は私は女子なのだ。心配はいらぬ」
雅はおきぬを安心させるために自らの乳房を手で軽く揺らしてみせた。
「…ほっ。そうだったのですか」
おきぬは雅を見て、にっこりと微笑んだ。
そのまま雅は、おきぬの浸かる岩場近くにしゃがみ込んだ。
ばしゃっ! ばしゃあっ!
温泉から手桶で湯をすくい身体にかけ始める。
「…ああ、いい湯だ…。とってもいい気持ち…」
湯船に浸かってくつろぐ雅とおきぬ。若々しい二人の女体はほんのり赤みを帯び、男の目で見ればたまらない色っぽさだ。
おきぬが雅に話しかけた。
「何故、身堂様は殿方の姿で旅しておられるのですか?」
「…父上の影響で、幼い頃からずっと剣の道を志してきた。私にとって男の姿でいる事の方が普通なのだ」
「そんなにお綺麗なのに勿体無い…。誰かお好きな殿方はいらっしゃらないのですか?」
「ふふっ。いないこともないが、何しろわがままなお方だから、お付き合いするのが一苦労なのだ。いつも振り回されている」
「わかりました! それってイエタツ様のことでしょう?」
雅はそれには答えず、艶然と微笑んだ。そのまま、ざばっと立ち上がる。
「私、お背中をお流しいたします!」
おきぬもそれを追って立ち上がった。
しゅっ。しゅっ。
おきぬが固く握り締めた手拭いで背中を擦り上げる。
「身堂様、肌がきめ細かくてすべすべ…。お尻も大きくて、本当にお綺麗ですわ…。女の私でもぽうっとしてしまいます」
「ははっ。照れるな…あまり見ないでくれぬか?」
上ずった声で熱い視線を向けるおきぬにいささか戸惑い気味の雅。話題を変えようと振り向いた。
「おきぬさん。今度は私が流してあげよう」
「いいえ、いいんです。もっと身堂様のお身体を洗いたいんです!」
むにゅっ。
後ろからおきぬの両手が雅の乳房を掴んだ。
「きゃっ! いきなり何を…」
雅は手を払いのけようとしたが、できない。少女の手が熱い。波動のようなものが乳房全体を包み込むように感じた。まるで心臓を鷲掴みにされたようだ。
やがておきぬの指は乳首をつまみ出した。指先でころころと転がされるうちに蕾が固くしこってくるのがわかる。
「ああっ…。そんな…っ!」
雅は快感に身悶えながら、全身から力が抜けていくのを感じた。