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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 37

「ば!馬鹿野郎!」
家竜は雅を連れ戻す為に屋敷に戻ろうとする。
しかし・・・
「上様!危ない!!」
突然背後の暗闇から、鋭い刃が飛んでくる。

キン!

「家竜・・・貴様にはこの屋敷の地下で屍に成ってもらうぞ・・・」
どうやら敵も抜け穴の事は知っていたようだ。影から十人程の剣士が姿を現す。
「く!・・・」
(ヤバイな・・・こいつ等かなりの使い手だ・・・恐らく何人かは、達人級の使い手を配しているハズ・・・くそ!急いでるっていうのに・・・)
家竜は内心焦りを感じながらも、刺客を迎え討つ為、剣を中段に構える。


 一方、雅はどうなったであろうか?
「はぁ…はぁ…はぁ…」
 暗闇に荒い息だけが聞こえる。
 動いているのは雅の影ただ一つだけ。肩で荒い息をしている。
 雅の姿は凄愴なものであった。
 髪をふり乱し、着物には返り血がはねて裾が大きくはだけていた。
 一体何人斬ったのだろうか? 刺客達の死体がそこら中に転がっている。
 雅の鬼神の如き活躍で大半が叩き伏せられ、残った連中は後退したようだった。
「…はっ!」
 人の気配を感じた雅が庭に飛び降りると、茂みの向こうから人影が姿を現した。
 雅の父であり尾張柳生を束ねる総帥でもある柳生厳徹だ。

「父上、この者達はなぜ私を襲うのです?! 糞虫は私を用済みだと言いました! どうしてなのですかっ!!」
「…………………」
 雅の問いにも、厳徹は無言のままでまったく答える様子はなかった。
 ギィイン!!
 厳徹は抜く手も見せずいきなり斬りつけた。
 がっちりと刃で受け止め、雅はさらに続けた。
「一体何故なのです? 私が裏切ったとでも?!」
 ぶしゅううううううっっっ!!!
 雅の顔に向かって、厳徹の口から何か液体が噴出された!
「ぐああっ!!! 目が…目がぁぁっ!!!」
 その液体はたちまち雅の顔面を覆いつくし、目に入った瞬間、激痛を引き起こした。
 思わずよろけたところを、厳徹は荒々しく蹴り飛ばした。
 どかっ!
 地面に叩きつけられ、目の痛みに苦しむ雅を尻目に、厳徹はこう言い放つ。
「雅よ? お前こそ何故生きておるのだ?! 暗殺をしくじった時には自害せよと教えたはずだ!」
「そ…それは…当身をくらい気を失ってしまい…」
「黙れ!! もう一度ワシの口からはっきりと言ってやろう。お前はもう用済みだ」
「そ…そんなっ!!」
「例え家竜を始末できても、しくじっても、いずれにせよお前は消される運命だったのだ!」
「父上! 父上は私に嘘をついたのですか…っ!!」
 雅の身体がわなわなと震えていた。
「尾張柳生の剣は最強なり。人を惑わす金瞳など要らぬ! お前のような忌まわしい邪眼の持ち主に家督を譲ることなど、到底できぬわ!」
 そう言って刀を収めると、片肌脱ぎになった。
 いつのまにか脇に控えていた裏柳生の手の者が巨大な木剣を差し出した。
 それは七尺(約2m)はあろうかという長大なもので斧のようにぶ厚い。
 厳徹はそれを受け取ると、軽い素振りをする。
 ぶんっ! ぶんっ!
 木剣が振り下ろされる度に風を斬る重く鈍い音が辺りに響く。
「女の膂力ではこういうものは振れまい? 邪眼も封じた。雅よ、じわじわとなぶり殺してやろうぞ」
 どんどん迫ってくる重厚な殺気を感じた雅は本能的に飛び下がった。
 刀は構えるが、目に走る激痛でとても集中できない。しかし、
(父上は本気だ…!)
 というのが殺気から伝わってきて全身鳥肌が立っていた。
「剣術などに手を染めず、女らしくおとなしゅうしておれば死なずに済んだものを…」

 ぶんっ!! ぶんっ!!
 厳徹の振り下ろす木剣が、空気を切り裂く凄まじい音を立る。
 そして右から、左から、上から、はたまた下からと次々と雅を襲う。
 雅にはもはや攻撃する余裕などない。
 柔軟な身のこなしで必死に避けるが、それで精一杯だった。
 巨大な木剣相手では、雅の持つ刀ではとても戦えない。当たった瞬間に叩き折られてしまうだろう。
 バシッ!!
 旋風のような勢いはかすっただけで手に持った刀を弾き飛ばされてしまった。
 刀を持っていた雅の右腕に衝撃が走り、全体がびりびりと痺れている。
 回転しながら宙を舞った刀がきらめきながら、ぐさりと庭に突き刺さった。
「ふふふ…。いつまで逃げ回っていられるかな?」
「…くうっ!!」

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