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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 24

(ちっ! 俺なんかのためにバカなことしやがって…!)
 流れる大二郎の血を見て家竜はそう思った。
 編み笠の浪人は、稲妻のように素早い動作で家竜が構え終わる前に攻撃してきた。
 しゅっ! しゅっ! しゅっ!
 鋭い三段突きだ。しかもよく伸びてくる。
 家竜は紙一重のところでかろうじてかわしたが、体勢を崩して尻もちをついてしまった。
(しまった…!!)
 ひやりとした瞬間、キン、キン、キン!と鋭い金属音が走る。
 とどめを刺そうとした浪人は、振り向いて背後から投げられた手裏剣を払い落としたのだ。
「楓、やめろ! 俺とこいつだけの勝負だ! 邪魔するんじゃねぇ!!」
 再び刀を構え直しながら、家竜はそう叫んだ。
 浪人はすぐさま後ろに跳び退り、周囲からの攻撃を警戒して左八双の構えをとる。
(今だ!!)
 家竜は浪人に小柄を投げつけた。
 キンッ!
 浪人が小柄を払うスキに飛びかかる。
「やあああああ―――っ!!」
 浪人は振り下ろされる剣をするりとかわしながら、家竜の胴を横なぎに払おうとした。
 家竜はそれを予測していたように途中で剣の軌跡を変えてギン!と受け止め、浪人の刀をはじき飛ばした。
 鋭い金属音と共に、腕にはびりびりとした重い衝撃が走る。
 そして着地しながら家竜が第二撃を放った!
(これで俺の勝ちだな…!!)
 家竜はそう確信したが、斬り裂いたのは浪人の編み笠だけだった。
 斜めに走るその剣を、ありえないほど後ろに反り返った姿勢で難なくかわしていたのだ。
 編み笠の下から現れたのは、まだ若い少年のような色の白い端正な顔立ち。
 長い髪を後ろで結んだ様子はまるで女のようだ。眉目秀麗である。
「ちっ!」
 浪人は吐き捨てるように叫ぶと、すらりと脇差を抜いた。
「形勢逆転だな! 降参するなら命だけは助けてやってもいいぞ?」
 そう言いながらじりじりと迫る家竜。
「…ふん!」
 浪人はじろりと睨むと、そのまま斬りかかってきた。
(バカな! わざわざ斬られにくるってのか?!)
 家竜は斬り上げたが、斬り裂いたのは着物だけだった。斬りにくると見せて脇をすり抜けていた。
 浪人はそのまま転がるように土手を駆け下りると、茂みに隠してあった小舟に飛び込んだ。
「しまった…!」
 家竜が追いかけて川辺までくると、舟は既に岸を離れ、川の流れに乗っていた。
 浪人をまじまじと見つめると、着物がさっきの斬撃で斬り裂かれ、胸元が大きくはだけている。その胸にはさらしが何重にも巻かれ、豊かな乳房が半分のぞいていた。
「ありゃ? お前、女だったのか…?!」
「家竜! 今度会う時までその命、預けておいてやる! だが次に会った時が最期だ!!」
 そう叫ぶ浪人の後ろには小柄な影がひとつ立っており、竿を操っていた。
 どうやら逃走の手助けをする相棒がいたようだ。
 呆然と立ちつくす家竜に楓がかしづいて呼びかけた。
「上様…。あいつら、追わなくてもいいんですか?」
「かまわねえ。それよりも、早く大二郎の手当をしてやれ」
 家竜の言葉を聞き終わる間もなく、楓の姿は消えていた。
「くそ!楓の奴また先走りやがって!!」
家竜は舌打ちすると、その場で手早く血止めだけを行い、負傷した大二郎を背負って近くの医者へと急ぐ。
(楓・・・無茶をするなよ・・・)
背中に自分の家臣の命の重みを背負いながら、家竜はそう心の中で呟いた。

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