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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 23

家竜が言う老中の隠し子とは、先代将軍から務めるある老中が、本妻とは異なる女性に産ませた姫の事だ。
彼女は諸事象が有って、大奥に出入りしていた豪商の養女として育てられた。
名前は椿といい、女子でありながら剣の腕前は凄まじく、免許皆伝を持つ……これが戦国の世の中で有れば、幾分役に立ったのだろうと思わせる程で、その分性格はじゃじゃ馬である。
因みに家竜も目を付けていたが、秋山との友情も有って、手を出していない。
「……実は胸に留めておくべきと思いましたが、上様の耳に何時届いてもおかしくない事と思い報告します」
「おいおい、厄介ごとか?」
どうやら真剣な話らしいと察して、友人をからかっていた家竜も、真剣な表情を浮かべる。
「事が事だけに……一介の剣客ではとてもではないですが」
「よし話せ」
「ハイ・・・実は私には、同じく剣の道を歩む友人が居ます。彼は尾張柳生の剣士なのですが、彼が聴いた所によれば、尾張藩主である徳川家虎(トクガワ イエトラ)公が、秘かに家竜様を狙って、刺客を放ったとの事・・・家竜様も十分ご注意を」
大二郎の言葉に家竜はむしろ拍子抜けする。
「フン!何だそんな事か、悪いがその手の話は、年がら年中聞いてるよ!!一国のトップに座ってんだ。命を狙われる心当たりなんざ、数えきれねえ位あるよ!!そして悪いが俺は、刺客にビクビク怯えて江戸城で震えているのは願い下げなんだよ!!」
「上様!!」
「分かった!分かった!身辺には気を付けるよ!!それよりとっとと吉原に繰り出そうぜ!!」
そう言うと家竜は、堅物の友人に剣以外の楽しみを教えてやろうと(余計なお世話)彼と共に夜の江戸の町に向う。

 今夜の家竜はいつもの遊び人風の町人姿ではなく、腰の大小を落し差しにした着流しの浪人姿である。
 そうでなくては秋山大二郎と連れだって歩くには都合が悪い。
 二人は提灯を持って三ノ輪から吉原に向かい日本堤を歩いていく。
「上様。私は女を買いに行くのではなく、あくまでも上様の護衛としてお供するだけです」
 むすっとした表情で大二郎が言った。
「まぁいっぺん女を抱いてみろ。俺が適当な敵娼(あいかた)を見繕ってやるから。女も知らずに惚れた相手を口説けるか? 『敵を知り、己を知れば、百戦危うからず』と、かの孫子も言うておる」
「ですから、私は…!!」
「あー、わかったわかった。お前は黙ってついてくればいいんだ。お前が初めてだと言ったら女どもがきっと喜ぶぞ…!」
 そう言って家竜はにやにやと笑った。
 と、その時。
 土手の向こうから、一人の浪人者がふらりと歩いてくるのが目に入った。
 この薄暗い土手で提灯も持たず、編み笠をかぶっている。異様である。
 一見、無造作に歩いているようでその実、まったく隙がない。
(この男…できるな…!)
 家竜と大二郎はさっきの話題を思い出して一瞬緊張した。
 二人は顔を見合わせ、軽く会釈をして道を譲ると、浪人は挨拶もせずにそのまますたすたと通り過ぎてゆく。
(なんだ、気のせいか…)
 そう思いかけた瞬間だった。
 しゅっ!!
 抜く手も見せぬ白刃の一閃が後ろから家竜を襲った。
「上様!!賊です!ぐあ!!」
「大二郎!!」
大二郎は主君を守る為、背後から襲って来た刃をその身で受け止めた。
「上様!!この刺客かなりの使い手です!!お早くお逃げください!!」
どうやら命に別状は無い様だが、利き腕を負傷した様だ。
大二郎の右腕の袖が流れ出した血で真っ赤に染まる。
「バカ言うんじゃねえ!!俺の可愛いい臣下に怪我させた落とし前この場で付けさせて貰うぜ!!」
家竜は腰から愛刀を引き抜き、刀を中段に構える。

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