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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 3

「よもや……それは」

「鉱山や農作業で馬や牛の如くに扱う……わが国も戦国末期に彼らが入り込んだのはそのような目論見があったのだろう」

鎖国へと雪崩れ込んだのは江戸幕府開帳以前、武士の頂点に立った太閤豊臣秀吉公がキリスト教を禁じたからだ……彼らの背後には圧倒的な軍事力がありキリシタン大名が増えないうちに先手を取り、庶民にも広がりを見せると弾圧した。結果的に大規模な叛乱が起きるも制圧出来たのは運が良く、鎖国へと方向転換したのである。

「抜け荷に人が含まれる理由とは」

「伊豆の守、野暮な事を聞くな……金や金剛石(ダイヤ)よりも実用的だからな、ましてや悪どもは女には眼が無い」

家竜の言葉に老中は納得した。

「そろそろ奴等もある程度商品を集めた頃だろう。そうすれば奴等も動きだす……お庭番達は潜り込み絞り込みを急げ」

「御意でございます」

家竜はその他必要な指示を終えると再び書類の決裁を始めた。
「上様!!一大事にございます!!」
江戸城の一角将軍家竜の執務室に通じる廊下を、どたどたと足音を立てて、一人の男が部屋に入って来た。
「何だ忠成か・・・どうしたんだそんなに慌てて・・・抜け荷の尻尾はちゃんと掴んだんだろうな?」
部屋に入って来たのは、家竜の側近中の側近である。江戸北町奉行の大岡越前の守忠成だった。
「そ!・・・それ所ではございません!!先程秋吉田藩から上様の妹君で在らせられる。秋吉田藩御正室紫月姫様が、失踪なされたとの知らせが有りました!!恐らく誘拐ではないかとの事です!!」
「な!!何だと!!」
つい最近、外様屈指の雄藩である秋吉田藩へと嫁いだハズの自分の妹が、何者かに誘拐されたとの知らせを受けた家竜は、驚きの余り持っていた筆を落とした。
家竜の妹である紫月が誘拐されたとの報告が届いてから、数日が過ぎた。妹が誘拐されたと知った家竜は、恐らくこの件も、抜け荷目的の誘拐犯によるものと考え、北町奉行所だけでは無く、南町奉行所や御庭番の忍びなど、幕府の総力を上げて(ただし将軍の妹が誘拐されたと知れると、厄介な事に成るのでその件だけは隠して)誘拐団の壊滅に当らせた。
(クソ!!奴らめ!!よりにもよって、俺様の妹を誘拐するとは、良い度胸だ!!もしも紫月にもしもの事が有ってみろ!!あいつ等全員どうかもう殺して下さいって言うまで拷問した後。皆殺しにしてやる!!)
本来なら自分自身で捜査に乗り出したい所だったが、家竜の強引な命令によって、通常の業務に一部皺寄せが出来たため、それによって増えた仕事を決済する為に家竜自身は、身動きが取れなく成っていた。
その事で家竜がイライラしていると部屋に一人の女が入って来た。
「家竜様、城におられたですね」
「これは月正院様……」
彼女は先代将軍の生母であり、現在は大奥の最高責任者である。若くして出家したのは、幼くして無くした我が子の魂を弔う為だ。先々代の将軍の養子として将軍に成った家竜とは義理の母子の関係にある。
「たまには大奥にも顔を出してくださいませ……よもや越前の守のお役目を奪うような……」
彼女もまた家竜の息抜きを兼ねた遊びを知っている人物の一人だが、当然その事に良い顔はしていない。
「恐れながらこの事件は幕府の安寧を揺るがしかねません……月正院様」
「ええ、分かっております。私も元は商人の娘ですから……ですがお世継ぎをもうけるのも、将軍の大切な仕事の一つです・・・家竜様には未だお世継ぎがいらっしゃいません・・・その状況で家竜様にもしもの事あれば、徳川家は・・・いえ天下はどうなります・・・」
月正院のその言葉に家竜はガクっとうなだれる。彼女の言葉は正論だったからだ。
「ふう・・・分かりました」
月正院は自分の息子である先代将軍の死後、次期将軍を巡って暗闘が行われたのをその目で見ているので、それを避ける為にも、お世継ぎはなるべくなら江戸徳川家で出したいのだ。

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