PiPi's World 投稿小説

暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

の最初へ
 0
 2
の最後へ

暴れん棒将軍 2

“御三家”とは江戸徳川家にお世継ぎが出来なかった事を備えて初代将軍の子供三人に其々“紀州”、“尾張”、“水戸”の国を治めて貰い、万が一に備えて後継者を育成しておく仕組みである。家竜は紀州徳川家の四男坊であり一生部屋住みになる筈であったのだが兄達が立て続けに急逝し彼が藩主になり、当時財政が厳しく諸問題が山の様にあった紀州藩を見事に立て直したのである。先代将軍が幼子になり、精が出来る前に死んだ為に御三家から誰を将軍にするか……喧々囂々(けんけんごうごう)の論争が起き、先代将軍の生母が家竜の誠実さに目を付けて推した事で、彼は征夷大将軍になったのである。

「(将軍と言っても退屈だしなぁ……)」

忠成を初め家老達が優秀で自分に口を出す事はないのだ、寧ろ長らくの天下安泰でダラケ切った若き旗本どもを鍛え直すぐらいしかなかったのだ。家竜は退屈凌ぎに幼少のころから武芸に励んでいた……それ故に大男であり、並の流れ者でも太刀打ちできないのである。
「竜の兄貴、また女漁りデスカイ」

「なんだ与太郎か」

岡っ引きの浜の与太郎が声をかけて来た。

「その分だとあんまり進んで無いようだな」

「へぇ、お陰で北町奉行の同心らは大変で……」

実はお江戸の町を騒がしているのは美人の町娘らが忽然と消えているのだ。神隠しと読売(今でいう新聞見たいなモノ)が騒ぎたてている。奉行所としては何としても真相を明かしたいのだが……結果は芳しくない。

「(この分だと忠成も動いているか)」

「兄貴はどう見てます?」

「……ただの遊び人だぜ、俺は」

とは言え、これは将軍としては見逃せない悪だ。彼は江戸城へと戻る事にした。
江戸城に戻ると老中達は詰めかける。

「殿!決済の書類ですぞ!!!」

全く、勝手に進めろよと言いたいがこれも征夷大将軍のお役目である。

「時に……例の美人町娘失踪事件はどうなっておる」

「面目ありません、北町奉行が責任を取ってお暇を申し上げてますが……もし許せば責任感を感じて腹を裂くでしょう」

「ふむ……仕方あるまい、お庭番筆頭を呼べ!」

お庭番とは戦国時代に名をはせた各忍びの里から選抜された忍者らで構成される者であり、普段は庭掃除役と言う偽りの姿をして城内各地の警備をするのだ。家竜の命により江戸八百八町から日本全国に散らばる忍びである。

「これは家竜様……この分では例の一件の事ですかな」

老人だが足腰はシャッキとして屋根から飛び降りたのである。

「僭越ながらも動いてますが……どうも抜け荷(今でいう密貿易)がらみと……」

「ほう……」

老中達は目を見合わせた。
この国では現在基本的に外国に渡海する事や、外国との貿易は固く禁じられており。近年まで外国との貿易は、長崎を通じた清国、オランダと、対馬藩にのみ特別に許された李朝鮮との交易のみが許されていた。
近年幕府は、長崎の他にも函館港を直轄領として、アイヌ、ロシア、アメリカとの交易も、限定的に行うように成っているが、未だ自由に外国と交易する事は、禁じられている。
勢い海外との交易では、密貿易が横行する事に成る。
ここまでして貿易の自由化に踏み切れないのは一つはキリスト教の存在、三代将軍の治世に起きた天草の乱は下手すると戦国の世に逆戻りし異国に日本を征服されかねないからだ。現に李朝鮮ではキリスト教信者による反乱も起きている事は阿蘭陀(オランダ)の商人からも聞いている。函館にて限定的に貿易協定を結んだ露西亜(ロシア)も亜米利加(アメリカ)もキリスト教を日本人に布教しない事を条件に漸く貿易が出来たのはやはり阿蘭陀の独占状態を崩す目的もあった。

「人売りとは……薩摩の一件も過ぎぬうちに、なんたる事を」

「メリケン人も人じゃ、余程この国のおなごがほしいのだろう」

老中の声に家竜が言う。薩摩での一件とは先々月に薩摩藩とおかかえの豪商“薩摩屋”が琉球王国を隠れ蓑にして密貿易をしている事を突き止め、この事件も彼が薩摩藩上屋敷に踏み込んで首謀者を成敗している。そして裁きにより首謀者の国家老は切腹、豪商は全てを没収された上に島流しだ。

「これはガタピシ(オランダの政商)から聞いたのだが欧羅巴(ヨーロッパ)各国やらメリケンは阿弗利加(アフリカ)各地から黒人を手当たり次第浚っている。奴隷としてな」


SNSでこの小説を紹介

時代物の他のリレー小説

こちらから小説を探す