PiPi's World 投稿小説

暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

の最初へ
 11
 13
の最後へ

暴れん棒将軍 13

 帳場に座る元締の亀右衛門は名前通り首が長くでっぷりと太った男だ。
「おうおう、そうかい。まぁ好きなだけ遊んでいきな。ほれっ、駒はこれぐらいあればいいか?」
 亀右衛門は木札を積み上げてまとめて差し出す。
「ありがとうごぜえやす!」
 三五郎は頭を下げてそれを押しいただくと賭場に座った。ここからが腕の見せ所だ。博打の腕には自信があった。

 …そして数刻後。
「九二の半!!」
「……ふぅ―――っ…」
 壺が開けられて賽の目が出ると、賭場には落胆のため息が大きな音となって響いた。
「ちぇっ! またやられた…!!」
「なんだ、新入りの一人勝ちじゃねぇか。やってられねぇよ、俺ぁもう下りるぜ」
「悪いねェ、お兄さん方。へっへっへ…」
 照れたように頭をかく三五郎の膝元には、木札がうず高く積まれている。
「おい、兄ちゃん。遊びもほどほどにしとけや」
 三五郎の後ろから、むさくるしいヒゲを生やした用心棒が声をかけた。
「いや、そうもいかねぇんでさぁ。お光って娘のお父っつぁんがこさえた借金を全部返してやりてぇんで」
 三五郎がそう言うと、どよ…と周りにざわめきが起きる。
「おい、若僧。お前、あの親父と知り合いか? それともお光に惚れてんのか?」
 それまでは悠然と煙管をふかしていた亀右衛門がにわかに眼光を光らせた。
「お光っちゃんとはただの知り合いでさぁ。でもね、困っている連中をほっとけない性分なんでね。親分、この駒でなんとかしてくれませんかね?」
「ああ?! 駄目だ、駄目だ!!」
「何で駄目なんですかい? これだけあれば、優に百両くらいにはなるはず…」
 三五郎もぐっと身構えて、負けじとにらみを利かせた。
「あの娘には、もう買い手がついてるんだよ。借金なんざタダの口実さ。そんなはした金じゃ譲れねぇ。諦めな」
「じゃあ、どれくらい金を積めばいいんですかい?」
「そうさなぁ…。三百両。もう決まった身請け話を反故にするんだ。迷惑料と手間賃でそれぐらいはいただかねぇとな…」
 亀右衛門はにやにやしながら、懐から出した左手で自分の顎を撫で回した。
「じゃあ、こいつを全部賭けましょう。この勝負に勝ったら証文を返していただけますかい?」
「ふんっ。いいだろう。だがこれが最後の勝負だぜ? 負けたら一体どうするんだ?」
「その時はあっしのこの身体、煮るなり焼くなり好きにしていただきやしょう」
「そうかい。男に二言はねえな? じゃあ、やってみな」
 そう言って亀右衛門は、壺振り師に向かって意味ありげに目配せをした。
 壺振り師がサイコロと壺を両手に持ち、周囲にようく見せた。
 一瞬、鋭い緊張感が走る。
「…ようござんすね? 入ります!」
 サイコロをさっと壺に入れると素早く盆に伏せる。
「ぎゃあああああっ!!」
 次の瞬間、賭場を乗り越えて飛び出した三五郎が壺振り師の腕を掴んでひねり上げた。
「やっぱりやりやがったな! おいらの思った通りだ!!」
 壺振り師の脇の下からサイコロがぽろり、と落ちた。
「素早くイカサマ賽とすり替えたつもりだったろうが、そうは問屋が卸すもんか!」
 そして亀右衛門をじろりと睨んだ。
「男と男の勝負にイカサマたぁ、どういう了見だ!」
「…男と男の勝負だぁ? 笑わせるんじゃねぇや。手前が女だってこたぁ先刻ご承知よ! 女相手にまともな勝負なんぞ出来るけえ!」
 亀右衛門は悠然とした態度で三五郎をせせら笑った。
「なんだとっ? 俺ぁ男だっ!!」
 三五郎はいきり立った。いきなり図星を突かれてぎくりとしたが、そんな素振りは見せる訳にはいかない。
 腕をねじ上げられて苦しむ壺振り師は、痛みをこらえつつ笑った。
「とっくにバレてたのさ。賭場の熱気で汗をかいたのが運のつきよ。手前の身体からは、なんとも甘ったるい匂いがするぜ」
「………っ!!」
(しまった…!! 調子に乗り過ぎたっ…)
 珊瑚は一瞬、自分の浅はかさを後悔したが、それはもう後の祭りだ。
(ならばっ…!)

SNSでこの小説を紹介

時代物の他のリレー小説

こちらから小説を探す