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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 108

「や――ッ!!」
 楓は懐から幾条もの縄を取り出し、四方八方へと投げ放つ。
「ほう? そんなちんけな縄で我らを縛るつもりか? 面白い! やってみせよ!」
 武姫は自信たっぷりに言い、刀を操る手を止めた。
 他の四人も武姫を見習い、手を止めて楓の動きを見物している。
 やがて舞台の上には楓の放った縄が敷きつめられた。
「今よ、上様! 皆であの櫓に飛びついて!」
 楓の合図で家竜らは一斉にそそり立つ櫓の骨組みに飛びついた。
「やあっ!!」
 楓の気合一閃、舞台の上の縄は引き絞られて武姫らを拘束しようと迫った。
「ふん。何だ、その程度の技で我らを縛ろうとするか? 片腹痛いわ!!」
 ブツッ!! ブツブツッ!!
 武姫は双刀を振るうと、眼前に迫る縄の群れを一瞬で切り落としてしまった。
「どうした? お前の技はこれで終わりか?」
 半姫が楓をあざ笑う。
「罠にかかったわね!!」
 楓は断ち切られたはずの縄をさらに強く引き絞った。
 後ろから迫った別の縄の群れが、武姫らをがんじがらめにしてゆく!
「おおおおおおおッッ!! な、何だこれは?!」

 解説しよう。
 ここで楓が使った縄術は、一種のロープマジックである。
 自分の周囲に縄が張りめぐらされた時、相手はまず目の前にある縄から切断するものだ。
 楓はそれを見越して、武姫らの前方にはダミーの縄を張り、後ろに本命の縄を張っておいたのだ。
 本命の縄には、さらに痺れ薬に漬け込んだ小針が縫い付けられている。
 武姫らが意識を失って動けなくなるのも時間の問題であった。

「おのれえええええっっっ!!! 小癪なくノ一めっ!!」
「八つ裂きにしてやるううううううう!!!」
 武将隊の五人は口々に楓を罵ったが、がっちりと縄で縛り上げられ、痺れ薬が効き始めているとなっては手も足もでない。
「大二郎! 藤兵衛! 上様を早く櫓の上に!!」
「うむ、あいわかった!」
 大二郎と藤兵衛は向き合って両手を組み、家竜の踏み台を作った。
「さあ、上様!」
「おうっ!」
 二人の手の上に飛び乗る家竜。
「ふんっ!!」
 大二郎と藤兵衛は渾身の力を込め、バネのように家竜の身体を空中高く放り投げた。
「うおおおおお――――ッッッ!!!」
 ガシッ!! 家竜はそびえ立つ櫓目がけて飛びついた。
 十六尺(約5m)もの高さの櫓である。目指す珊瑚のいる頂上はまだ数尺上方だ。
 家竜は刀を口に咥えて必死に登り始めた。
「おいっ! 珊瑚! 助けに来てやったぜ!」
「む"う"う"う"う"う"〜〜〜っ!!」
 家竜はようやく一番上にたどり着くと、円板に固定されている珊瑚の手足の縛めを外してやる。
 猿轡を解かれて完全に自由になると、珊瑚は全裸のまま家竜に抱きついた。
「竜さ〜〜〜んっ!!! あたし怖かったの〜〜〜!!」
「よしよし、安心しな。俺が来たからはもう大丈夫だ。しっかり掴まってるんだぜ?」
 そう言って珊瑚をおぶって櫓から降りようとした、その時であった。
 ドスッ!! 短刀が家竜の胸を深々と刺し貫いていた。
「死ね! 家竜っ!!」
「な…何故だ? 珊瑚…っ?!?!」
 短刀の柄は白濁した淫蜜に濡れ光っている。珊瑚は己の秘所に短刀を隠し持っていたのだ!!
 全身の力が抜けた家竜は、珊瑚を抱きかかえたまま櫓の上から落下した。
「危ない! 上様っ!!」
  家竜の危機を一瞬で見てとった楓は手にした縄を放り出すと、客席に飛び込んでありったけの座布団を抱えたまま落下地点に身を投げ出した。
 ドサドサドサッ!!

「う…ううう…っ」
 二人は座布団の塊と楓の上に落下した。
 家竜はこんな時でさえ珊瑚をかばい、自らを下にして珊瑚を抱きかかえるよう落ちている。
 家竜の胸から鮮血が流れ出し、舞台を血に染めていった。
 無事だった珊瑚は家竜に刺さった短刀を引き抜き、思い切り振り上げた。
「家竜!! とどめじゃ!!」
「危ないっ!!」
 藤兵衛が体当たりを食らわして珊瑚を跳ね飛ばすと、大二郎ががっちりと受け止める。
「くそっ!! 離せっ!!」
 凄い力で暴れる珊瑚に手を焼いた大二郎は仕方なく当身をくらわした。
 すかさず雅が家竜に駆け寄り、着物の裾を破いて縛り、とりあえずの止血を施す。
「家竜とねんごろな娘が何故このようなことを…?」
 驚きの表情を隠せない藤兵衛が呟くと、後ろから高笑いが響いた。
「家竜よ!! この女は時宗様の幻術でお前を憎む心を植えつけられておるのだ!! 愛しい女に殺される気分はどうだ?!」
 武姫が勝ち誇ったように叫んだ。
「ほおおぉぉぉぉっ!!!」
 武将隊の五人は鋭い気合と共に全身に巻かれた縄を引きちぎる。
 そして刀でこめかみを切ると、瀉血の要領で痺れ薬の回った血を放出した。

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