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暴れん棒将軍
官能リレー小説 - 時代物

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暴れん棒将軍 106

「ゼェゼェゼェ・・・」
渾身の攻撃を全て凌がれた家竜は、疲労で一旦剣を引く。
「フフッもう終わりか?では、今度はこちらから行くぞ!!」
次の瞬間、まるで獲物を見つけた猛禽のような鋭い光が、彼女の双眸に宿る。
その凶暴な眼光に思わず怯みそうになる自分を叱咤するかの如く、家竜は大声で自らを奮い立たせ、刀を振りかぶる。
「くッ!ハアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
追い詰められ、窮鼠となった家竜は、一切の防御を捨て突進し、その勢いのまま渾身の力を込めて刀を振り下ろす。
だが、武姫はそれを左手に持った刀で簡単に受け流すと、身体を一回転させて、もう片方の刀で家竜の胴を払う。
予期しなかった動きであり、その速さも尋常ではなかった。
まるで疾風のような一閃に家竜の服は裂け、腹に真横に赤い筋が走る。
「上様!」
それを見た大二郎は思わず悲鳴を上げる。
(こりゃ殺されるかも知れねえな・・・)
だが、この時不思議な事に家竜の心に死への恐怖は無かった。
それどころか妙な高揚感さえ感じている自分が居る。
(なるほど、俺は自分で思っていたより、ずっと真っ当な剣士だったようだな)
今の一撃だけでも、相手が自分よりも遥かに格上の剣士だと分った。
そういう相手に負けたのなら、納得して死んでいける。
(それはつまりお前が将軍の器では無いと言う事さ家竜・・・)
合戦において大将の首が落とされるというのは戦の敗北を意味する。
故に将軍にとって最も大切な事は、死なない事であり、言い方を変えれば引き際を誤らない事だ。
相手が自分よりも遥かに凄腕の剣士だと分った時点で、家竜は将軍として一旦勝負を引くべきだった。
だが、家竜は一旦引くべきという理性の声を無視し、剣士の本能に従いなお勝てない戦いに挑む。
「ハアアアアアアアアア!!!!」
家竜は気合の声を上げ、精神を集中し、相手の動きを全身で感じ取ろうとする。
武姫は二本の刀を巧みに操り、ありとあらゆる方向と角度から家竜に切りかかる。
家竜はその刃を紙一重で避け、あるいは刀で弾き返し、相手の隙を窺う。
だが、そんなものは全く見付からず、それどころか息つく暇もない連続攻撃に防戦一方に追われている。
(いくら化け物でも相手は女だ・・・体力なら俺の方が優っているはず・・・)
家竜はひたすら我慢して相手が疲れるのを待つしかないと覚悟を決める。
だが、凄まじい運動量にも関わらず武姫は呼吸一つ乱さない。
二本の刀は嵐の如く襲い掛かり、家竜の体を引き裂こうとする。
(くッ!これ以上防ぐのは無理だ・・・イチかバチか勝負してやら!!)
これ以上防御に徹してもジリ貧だと判断した家竜は、次の瞬間遂に仕掛けた。
二本の刀による攻撃を身体ごと前に進める事によって致命傷を避け、切り付けられながらも、腕を一杯に伸ばして刀を一閃する。
その渾身の一太刀は武姫の脳天を両断するかに見えた。
しかし、武姫はその一撃を余裕を持って見極めると紙一重で逃れる。
そして半歩ほど間合いを詰め、体勢の崩れた家竜を挟み込むように刀を振るう。
右手の刀は首筋を、左の刀は脇腹を狙っており、最後の賭けに敗れ、体勢を崩した家竜には、防ぐ事も、逃れる事も出来ない。
(ああ・・・死んだな・・・)
せめて最後まで誇り高くあろうと家竜は武姫の顔を睨みつける。
だが、二本の刀が今まさに家竜の首と胴を切り落とすその瞬間、武姫は突然背後へと飛ぶ。

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