暴れん棒将軍 102
二番目は鮮やかな柑子(こうじ)色の着物に身を包み、野太刀を背負った美女だ。
美女はいきなり側転して飛び退くと身をかがめ、「はぁっ!!」という鋭い気合と共に長刀を抜き放った。刃の長さだけで三尺余(約1m)はあろうかという大刀である。すらりと抜くだけでも相当な鍛錬が必要であろう。
その大刀をぶんぶんと振り回しつつ飛び跳ね、片脚を膝の高さに持ち上げたままくるくると回転。
この美女も着物の下は何も穿いておらず、黒い茂みが丸見えだ。チラチラと見えるたびに歓声が上がる。
ぴたりと止まった美女は大刀を構えて名乗りを上げた。
さて其の次の 美丈夫は
産まれは豊州 豊前国 剣の道を志し
(富田)勢源 (鐘捲)自斎を 師と仰ぎ
背に負うたるは 三尺余 備前長船長 物干し竿
一乗滝で編み出した 秘剣は その名も燕返し
我は巌流 佐々木小姫!!
続いて紅梅色の着物の美女が飛び出してきた。
手には四尺(120cm)程の長さの十文字槍を抱えている。それを縦横無尽に振り回す。
天に突き上げ、前方に素早く突き出しては引っ込める。頭上でぶんぶんと振り回し、低くなぎ払う際は他の四人が縄跳びの要領で膝を曲げて一斉に飛び上がる。
さらに「破ッ!!」と叫ぶなり、槍の石突きの部分を舞台に突き立てて、棒高跳びの選手の様に両脚を揃えたまま逆さまに空中に飛び上がった。当然着物はまくれて下半身が全て露わとなる。見事な体技とお色気に大きな拍手とさらなる歓声が上がる。
ストッ!! 見事に着地した美女は降ってくる槍を右手で掴み、左手は前方に突き出したまま腰を落としてビシッとポーズを決めた。
続いて次に 控えしは
童女(がき)の頃から 手癖が悪く
預けられたが法相宗 思いもかけぬ興福寺
尼さん修行も 娑婆駄馬に
槍の修行に精出して 穂先で描く十文字
宝蔵院流 舜姫!!
次は萌葱(もえぎ)色の着物を着て銅銭の眼帯をつけた美女が飛び出した。
「きえーッ!!」
気合と共に抜き放った刀を大上段に振りかぶり、鋭く何度も打ちすえる。両脚を大きく開いたまま腰を落とし、逆袈裟に構えて下から斬り上げる。また目にも止まらぬ速さで突きを繰り出したかと思えば、刀を納めて正拳突きや上段蹴りを決める。
前の三人ほど動作が素早いわけではないが、力強い動きである。
又その次に 連なるは
以前は 東公の中小姓(ちゅうごしょう)
勘気こうむり 諸国流浪
父に撃たれし 隻眼に
映るは花咲く武蔵野と 空に瞬く月之抄
腰の刃は 三池典太光世
其の名も柳生新陰流 十姫!!
最後に京紫色の着物の美女。甲冑は一番軽装で、鉢金のついた覆面をして短い忍者刀を背負っていた。
この美女は身が軽い。音も立てずにびゅんびゅん舞台上を跳ね回り、槍の上に飛び乗ったり、トンボを切って仲間の肩の上に立ってみせたりする。
「とぅーっ!!」と叫んで肩の上から飛び上がり、空中で三回転半してから着地。
逆立ちして手でとつとつと歩き出すと、着物はすっかりずり落ちてお尻も前の茂みも丸出しとなる。そこに浴びせられる大歓声。
腕の力だけで飛び上がり、舞台の隅に着地すると懐に手を入れる。
しゅしゅしゅっ!! 取り出した棒手裏剣は舞台袖の大柱にカツカツと突き立てられた。
さてどんじりに 控えしは
東証神君 お守りし
見事越えたる 伊賀の山
微塵隠れだ 火焔の術だ
後ろに控える伊賀同心 その数なんと二百人
伊賀流忍術 服部半姫!!
「負けないよ!」
「立ち上がれ!」
「弱くない!」
「大丈夫!」
「絶対諦めない!」
「名古屋名物!! ういろう、きしめん、味噌カツと…。そして我ら、おもてなし武将隊!!!」
名乗りを上げた順番にセリフが響き、決め台詞は全員で叫ぶと思い思いのポーズを取った。
「うおおお〜〜っ!! えぇぞ〜ッ!! えぇぞ〜ッ!!」
割れんばかりの大歓声がそれに応えた。