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吉原遊郭〜胡蝶亭艶聞〜
官能リレー小説 - 時代物

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吉原遊郭〜胡蝶亭艶聞〜 7

紅葉は負けじと言い返す。
「あんたの方こそ!花魁としての誇りも無く金払いさえ良ければ誰彼構わず股を開く淫乱じゃないのよ!」
「淫乱ですってぇ!?女郎が淫乱で何が悪いってのよぉ!?」
「ハハッ!やっと正体現したわね!?この女狐!」
「キィ〜ッ!!あんたなんて品川の岡場所(私娼窟)が御用改めに遭って行くとこ無くなってた所をご主人様に拾って貰ったクセに偉そ〜に!な〜にが“花魁の誇り”だよ!?」
「こ…このぉ!殺す!!あんたは私の手で殺してやるぅ〜!!」
「やれるもんならやってみな!!」
ついに二人は取っ組み合いの大喧嘩を始めてしまった。
たちまち着物もはだけて殆ど裸で取っ組み合っている二人をお花とお染は遠巻きに見ながら話し合う。
「お…お染ちゃん、あれ止めた方が良いんじゃあ…」
「良いのよ。いつもの事だから…それよりお花、姉女郎の事を“さん”付けで呼ぶのは無しだよ」
「え?だめなの?」
「うん、普通“姐さん”を付けて呼ぶもんだよ。“紅葉姐さん”とか“深雪姐さん”とかね」
「へぇ〜、遣り手の美津さんも?」
「美津さんは“美津さん”だよ。あ…でも花魁歴の長い姐さん達の中には敬意と親愛の情を込めて“美津姐さん”って呼ぶ人もいるよ」
「どういう事?」
「そりゃあね、あの人はかつてこの吉原遊廓一の花魁と呼ばれていたお人だったからさ。高尾太夫って言ったら、あの美津さんの事だよ。どうだい?びっくりして腰抜かしたろう」
「ごめん、ぜんぜん知らない…」
「なんだ、田舎者だねぇ…私は廓に売られて来る前から知ってたよ。江戸の町人達の間でエラい人気で、姿絵なんか売り出されれば即日完売。男達だけじゃない。女達も着物の着こなし方や髪型、簪(かんざし)なんか真似しちゃったりして、もう凄いのなんの…!」
花魁の本質は売春婦なのだが、江戸も中期以降になると、役者、力士などと並んで芸能人的な要素を帯びて来る。
いわばファッションリーダーだったのだ。
「…まぁ、でも一番凄いのは、あの人以降“太夫”と名の付く花魁が一人も出てないって事だね。最後の太夫だよ。あの人が…」
太夫(たゆう)は花魁のランクのような物…その最高位である。
遊女、芸妓における太夫の称号は江戸時代初期に誕生した。
当初は女歌舞伎の役者で特に芸達者の者が「太夫」と呼ばれたのが始まりだといわれる。
やがて遊廓が整えられ遊女の階級性が確立、美貌と教養を兼ね備えた最高の遊女に太夫の称号が与えられ、京の嶋原、江戸の吉原、大坂の新町の三大遊郭に一人づつ配置されるようになった。
太夫を相手にするには高額の費用が必要とされており、彼女達は主に公家、大名、旗本ら上流階級を相手にしている。
寛永年間には、吉野太夫・夕霧太夫・高尾太夫ら寛永の三名妓が輩出し、太夫は遊郭の頂点であり象徴とされるまでに成った。
「美津さんは若い頃から美貌と教養で知られていてね。二十歳の時に寛永の三名妓に肖って二代目高尾太夫の名を襲名したんだよ・・・引退した今でも美津さんは吉原の顔役の一人で旦那連中にも顔が利いて、この胡蝶亭が開店から数年で名店って言われるほど発展したのも、美津さんの存在が大きいんだ・・・もっとも、その美津さんも他の姐さん方も全員旦那様にメロメロなんだから、そう言う意味じゃ一番凄いのは旦那様かも知れないね」
「はぁ、そうなんですか・・・」
田舎者であるお花には今一つその凄さがピンとこない様だ。
「美津さんが凄いのは何となく分りました。ところで旦那様はどのような方なのです?」
「アラ?お花は旦那様に興味が有るの?まあ、あの美丈夫に処女奪われたら惚れちゃうのも当然か」
「ち!違います!わ、私はただ!!」
「ああ、気にしない!気にしない!この廓の女郎の殆どは旦那様の虜に成ってるんだからね!かくいう私もその一人さ!ま、私は上の姐さんを敵に回してまでどうこうしようって程身の程知らずじゃ無いけどね!あんたが姐さん達を相手取ろうって言うなら応援くらいしてやるよ!!」
「お染ちゃん!!」
お染のからかいに根が純朴な田舎娘は顔を真っ赤にして叫ぶ。

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