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吉原遊郭〜胡蝶亭艶聞〜
官能リレー小説 - 時代物

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吉原遊郭〜胡蝶亭艶聞〜 1

江戸幕府初代将軍である徳川家康は、自らの政権の首都を江戸に置いき、それまで草深い田舎町に過ぎなかった江戸は、以後幕府の手によって、日本最大の都市へと変貌をとげる。
江戸幕府開府から百数十年、江戸吉原遊郭は、大都市江戸の数多い快楽街の中で、唯一幕府に公認された遊廓として、国内最大の快楽街として、繁栄していた。
それはあたかも、より強い光を当てることで、影がより濃く大きくなっていくように。吉原遊郭もまた、江戸の繁栄と軌を一にするように大きく成っていった。
その繁栄は、まさに不夜城と呼んでよいほどであった。
その吉原遊郭の一角に『胡蝶亭』という娼館が在った。吉原遊郭の中でも新興の店だが、店主が二十代の若造にも関わらずやり手のため、僅か数年で『胡蝶亭』は吉原遊郭でも有数の名店となった。
だが店主である 胡蝶亭の光次郎(コチョウテイのコウジロウ)は、満足してはいなかった。何故なら彼には、絶対に成し遂げねばならない、ある目的があったからだ。
そしてその目的を達する為には、より多くの美しい、何より、自分に忠実な女たちが必要なのだ。



「お父ちゃん・・・お母ちゃん・・・」
ある晴れた日の朝、一人の少女が廓の門をくぐった。少女の名はお花、まだ十歳ほどの少女だが、黒いパッチリとした瞳と短いがサラリとした髪の娘で、花が咲く前の蕾のような美しさを持っていた。
「なんだ・・・まだガキじゃないか・・・・」
「へへへ、確かにそうですがね。だがこの娘は美人になりますぜ旦那・・・それにその手の客にはちょうどいい年でしょう?」
「だが三十両は高すぎやしないか?」
「そこはそれ、先行投資と考えてくれれば・・・」
(ああ・・・やっぱり私娼婦になるんだ・・・なんで父ちゃんや母ちゃんと一緒に死ねなかったんだろう・・・)
お花は二人の会話を聞きながら絶望的な気分になっていた。
お花はつい先月まで優しい両親の下貧しいが幸福に暮らしていた。貧しい村の農民の娘として生まれたお花は、両親にとって一人娘ということで、甘やかされて育った。
だが運命は残酷にもお花から両親を奪ったのだ。お花は流行病で両親をいっぺんに失った。
その後お花を引き取った伯父は酷薄な人物でお花を村に来た男に売り払った。そして今日お花は吉原の遊女屋に売られようとしていた。
「まて三十両だったな・・・その娘私が買い取ろう」
男たちが値段の交渉を続けていると店の二階から一人の男が現れ言った。
「ありゃ!こりゃあ胡蝶亭の旦那でないですか、困りますな・・・私どもの交渉に急に入って来られてわ・・・」
遊女屋の店主は顔をしかめる。
「ではいくらで売る?四十両か?五十両か?」
「いやはや、旦那にはかないませんな。ここは手を引かせてもらいましょう・・・おい!いいな!」
「ヘイ!旦那・・・で?胡蝶亭の旦那がお買い上げで?」
男は揉み手をせんばかりに光次郎に媚を売る。
「ああ・・・三十両だったな・・・」
光次郎は懐から小判を取り出すと男に与える。
「へへへ・・・まいど!・・・おい!今日からお前さんはこの旦那の物だ!しっかりお仕えするんだぞ!」
こうしてお花は三十両で胡蝶亭に買い取られたのだった。

「ここが俺の店だ・・・娘よお前は今日から年季が明けるか、落籍されるまでここがお前の家だ」
光次郎はお花を連れ自分の店へと帰ってくる。
(ああ・・・やっぱり娼婦になるのか・・・)
光次郎が颯爽と現れた時は、光次郎のこの世の物とは思えない美しい顔立ちに、胸の高鳴りを覚えたお花だったが、世の中はそれほど甘くは無かったようだ。

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