全てを失ったお姉さんがショタに救われる話 7
掃除は嫌いでない。
嫌いで無いと言うか、私にとって掃除は一人で無になりたい時によくやっていたぐらいで、むしろ好きかもしれない。
とりあえず店の前から掃除を始める。
お店の前の県道はほぼ店の前ぐらいが一番高い所でそこから左右に降っている。
右側に狭間ノ浜があり、ここからでもよく見える。
右側には集落は余り無く段々畑が広がっている。
左側には狭間漁港があり、集落や駅はこのカフェの後方から左寄りの高台から漁港寄りに広がっていた。
つまりカフェは集落から見れば少し外れた位置にあり、駅に行くには集落の方に一旦行って、シャッター街と化した商店街を抜けて行く感じだ。
そして、あの狭間神社は右手の段々畑の奥にある森の中にあるようだ。
ここからはそんなに離れてはいない。
「いい所よねぇ・・・」
海からの爽やかな風が心地よい。
何もない田舎だけど、ここには都会に無い魅力しかないように思える。
でも結局は不便なんだろう。
電車も二時間おきに一本止まる程度の単線のローカルだ。
そんな風に思いながら表を掃除していると、どこからどう見ても巫女装束のような女の人が店の前までやってきた。
「あら、どなたかしら?」
話し方も雰囲気もおっとりしている。
顔つきは優子さんにそっくりだが、しっかりした優子さんとは対照的に、どこか浮世離れしてるぐらいおっとりとした感じだった。
「もしかして、優子さんのお姉さんですか?・・・私は昨日からお世話になってる橋ノ口奏と申します」
「あら、ご丁寧に・・・私は優子の姉、祥子です」
ニコニコと笑う祥子さんはおっとりほんわかしていて、優子さんの方がお姉さんに見えてしまう。
彼女もまだ二十代と言うから若いのは若いんだけど、浮世離れした感じからか、私より若く感じてしまう。
私が中に声をかけると、入って貰っての言葉。
私も祥子さんと共に中に戻る。
「お姉ちゃん、丁度良かったわ・・・奏さんを紹介しようと思っていたの」
「さっき、自己紹介済ませたわ」
姉妹の性格は違うが、やっぱり並ぶとよく似ている。
「もしかして奏さんって外国の方?」
少し意味が分からず戸惑うが、祥子さんの目が私の髪を見ているようで納得する。
「いえ、髪染めてるだけですよ」
「凄いっ!・・・髪染めるのって悪い子ばかりだと思っていたのに!」
「お姉ちゃん・・・都会の女の子は奏さんみたいにお洒落なのよ」
優子さんも祥子さんも黒髪。
でも祥子さんの反応は、やはり浮世離れしている。
優子さんの方が世間を知ってるようだけど、髪染めるのが不良っていつの時代かと笑いそうになる。
「お洒落な人っていいなぁ」
まるで女子高生かと言うぐらいキラキラした目で私を見る祥子さん。
私も一時期お洒落に飢えて色々したけど、まるであの頃の自分みたいだと思ってしまう。
「この程度で良ければ教えますよ」
「「ほんと?!」」
姉妹がハモる。
今度は優子さんも食いつく。
この姉妹、確かに野暮ったい。
元が凄くいいだけに残念な感じがある。
私もお化粧覚えてお洒落するようになって色々人生変わった部分も体験したけど、彼女達もそうなりそうな気はする。
休憩がてら優子さんと祥子さんとそんな話もしつつ、祥子さんはお店のお掃除も手伝ってくれた。
「お店、再開できるのね」
「奏さんのおかげでね」
「まだ今日、ほんのちょっとだけ掃除しただけですよ…」
祥子さんからまるで救世主みたいな目で見られてしまっている私。
そして、さっきから何か言いたそうな優子さん。
ちょっと頬を赤くしながら躊躇していたけど、ようやく声に出す。
「あの・・・奏さんみたいな・・・素敵な下着って、何処で買うんですか?」
ああ、そう言う事ね。
下着屋さんなんて隣町まで行かないと無いんだろうけど、地方の小都市でしかない隣町も対して店が無いのかもしれない。
「えっ、奏さんって凄い下着してるの!」
祥子さんの反応は、ほぼ女子高生だ。
なんて言うか、純朴な田舎の女性なのだろう。
「凄いって言うか、普通ですよ」
普通と言いながら苦笑してしまう。
彼女達の普通と私の普通は違うのだ。
とりあえずブラウスのボタンを取り前を開く。
そうすると2人からため息が漏れる。
「綺麗・・・」
「素敵だわ・・・」
羨望とか称賛。
キラキラした目で見られると、何だかこそばゆい。
ああ、これは私を見る玲奈ちゃんの視線と同じだと気付いた。
「結構私も大きいのがなかなか無いから、通販がメインだったりするんですよ」
某大手通販だと海外の綺麗なデザインのもあったりして、胸が大きすぎる私でも選択肢が多くて助かっている。