全てを失ったお姉さんがショタに救われる話 12
あの歳頃の男の子らしい純粋さを感じた。もしかしたら私(の胸)に優子さんや祥子さんと同じものを感じたのだろうか。そうだとしたら素直に嬉しい。
「奏さんも、涼真のことを気に入ってくれたら嬉しいわ」
「気に入るというよりは…あの子は命の恩人だと思ってます」
彼に会っていなけらば自殺していたかもしれない。
そんな気持ちで言った私を、2人は微笑んで見ていたのだ。
そして祥子さんがまた明日と帰って行き、お店は昼の営業を始める。
ぞろぞろと入ってきたのは老人達だ。
「優子さんや、来たぞい」
にこやかな老人達。
優子さんと交わす一言一言が、老人達が優子さんを大事にしてるのが分かる。
「あんたみたいな若い子が、こんな所でお仕事かい?」
「はい、昨晩からお世話になってます」
「そうかい、優子さんや涼くん達を宜しく頼むぞい」
私にもにこやかな老人達。
老人達はいわばこの店の常連である里の人達だ。
「若い者は皆町に出てしまったからのぉ・・・あんたがここに居てくれれば華やぐのぉ」
「ありがとうございます、そう言って貰うと嬉しいですわ」
こう言う地元の人が店を盛り上げてくれるのはいい事だ。
しかし僅かな年金と大きく稼げる訳でない農業や漁業の稼ぎでは、毎日来て貰うのも気の毒なぐらいだ。
故に店のメニューの設定額は安めである。
そのため店としての利益も少ない。
でもここを憩いの場にしてやってくる方々の顔を見るのはいいことだし何より皆さんいい人っぽいのが見てわかる。
私としても、お年寄りや小さな子供は男の人でも安心して接することができる。
何より他より育ち過ぎた胸を好奇の眼で見てくることは少ないから。
「そうだ、優子ちゃん、これ、みんなで食べるといい」
お客の一人のおじいさんがクーラーボックスを持ってきた。
中には新鮮なお魚がいっぱい。
「まあ嬉しい…お店のメニューになるかしらね」
「それもいいかもねぇ。でも、一番はお子さんたちに食べさせてやってよ」
そして漁師のお爺さんはこう言う。
「涼くんは氏神様の授かり子だ・・・沢山食べて大きくなって欲しいんだ」
微笑むお爺さんは伝承を全く疑っていない顔だ。
だけど、その期待は涼真くんに重いのではなんてふと思う。
優子さんや祥子さんはこの里が心から好きで生活しているようだ。
だけど、将来が見えないこの限界集落の里に縛りつけてしまうのはどうなんだろうか・・・
部外者である私には何も言えないが、そんな心配をしてしまう。
私のそんな考えを他所に、昼の営業が終わる。
「ふふ、今日は奏さん見たさにお客さんも多かった感じね」
毎日これだけ来れば大繁盛だろうけど、私と言う異分子が来たから売り上げが増えたでは安定した収入増とは言えない。
そして私と優子さんが店の片付けをしていると、ただいまとの元気な声。
まずは玲奈ちゃん。
そして涼真くんと、その後ろに素朴で地味な感じの少女。
涼真くんよりやや背が高く、胸も年齢不相応に大きい。
顔つきから彼女が祥子さんの娘である気がする。
「彩ちゃん、この人が奏さん!」
玲奈ちゃんが彼女を私の前まで連れてきて紹介してくれる。
「あ、は、はじめまして……古瀬彩奈です…」
「橋ノ口奏です。よろしくね」
なんかオドオドしてるのが可愛い。身体の発育は素晴らしくてそこにばかり目が行ってしまう。
涼真くんと玲奈ちゃんは旦那さんの苗字のようだ。彩奈ちゃんも彼の娘ではあるのだが。