ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 994
「イケメン娘婿が後継ぎだってね」
そう言うのは美月さんだ。
「そんなことが…僕はそんなつもり全くないのに」
「あまり気にしなくていいよ。私たちはそんなの信じない。匠くんの味方だよ」
「はい…ありがとうございます」
参ったな;…
社内には僕が和彦さんの義理の息子だって知らない人も多いのに…
「まあ人の噂も四十五日って言うじゃない…それにこれでアイドルタレントのお泊りが発覚でもしてごらんなさい、取材人なんて波が引くように皆そっちに移動するはよ…」
「それならそれでありがたいんですけどね…」
今朝は早くからなんだか疲れがドッと溜まった気分だ。特に何もしてないというのに。
「今日は外回りの予定ないでしょ」
「はい…内勤でいいですかね」
「たまにはゆっくりするのも必要よ」
デスクに座る僕のところに、葉月ちゃんがお茶を持ってやってくる。
「匠さん、おはようございます〜」
僕のマグカップを差し出しながらの笑顔…
「おお葉月ちゃんいつも悪いね…」
毎朝のこの気使いに恐縮してしまう…
あれ…?お盆の上の見慣れないカップが目についた…
「誰のそれ…?」
「ああ今日からなんですよ…営業二課から新庄さんが転属されて来たんです…」
あああいつがね…
そういえばそんな話を聞いたのもなんだか遠い昔の話のような気がするな。
その彼女の美玲ちゃんは隣のデスクで仕事に勤しんでいる。
まあ気にせずうまくやってほしいものだ。
…いろいろあったけど、とりあえず始業。
僕も仕事しなくては。