ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 993
「従業員の皆さんは大丈夫かしら?…」
香澄が彼女たちを部屋に招き入れる。
僕はパンツを見られたことにちょっと照れ、慌ててスーツのズボンを上げる。
「ええ、敷地内に住んでいる私たちは問題ないんですけど、外から通っている人たちは心配です…」
そうか、外からくるスタッフさんもいるからね。
「匠さんは裏口から出ていかれますよね」
「うん、そのつもり」
「さすがに裏口は人は集まっていないと思いますけど…」
「お父様は…」
香澄が心配そうに口を開く。
「はい、それは心配いりませんは…幸い前前から海外に出張の予定が入っておりましたから…」
あっ、ヘリで空港まで行くってことか…
「よかったぁ、それなら取材人に取り囲まれることもないはね…」
安心した表情を浮かべる香澄…
やっぱり和彦さんのそんな姿は見たくはないんだな…
その安心した顔を見届けて僕は支度を済ませて家を出る。
幸い、裏門の方は無人だった。
…なんか逃げ出すような気がしたのは秘密だ。
門の前の守衛さんに軽く頭を下げてオフィスを目指す。
「おはよう匠くん…よく来れたね」
本社の入り口前で夏子さんと会うことができた。
「はい、何だか自分が悪いことをしたみたいで、決していい気分ではありませんでしたけど…」
緊張したせいか汗をかいていた…僕は歩きながら上着を脱ぐ。
「ああ、あの週刊誌…匠くんのことも書いてあったものね…」
…ん?
「うぇっ?!…僕のことがですかぁ!?…」