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ほんの少しの勇気で人生って変わると思う
官能リレー小説 - 年下

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ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 1

「はぁ…」
繁華街を今日もトボトボ歩く。
2週間前、派遣として働いていた工場での契約を打ち切られ、住んでいた寮も出てネットカフェ生活。
そろそろ、金銭的にヤバイ状態に入った。
実家に帰る金なんてない。
…帰ったとしても、親父にもお袋にも怒られるだけだから、結局損だ。

ゴロゴロ…
一面灰色の厚い雲に覆われた空から、雷鳴が轟くと、その刹那、雨粒がパラパラと降り始める。
「マジかよ…ついてないなぁ」

一瞬の雨しのぎに、コンビニを探す。
…ついでに、残り少ない預金を下ろしておこうかな。

―と、思ったそのとき
「おにーさーん!!」
背後から女の子の声がした。

驚いて振り向く。
長袖シャツに赤と黒のチェック柄のスカートの女の子が、こっちに向かって走ってくる。
「…おにーさんって、僕のこと?」
「この辺を歩いているおにーさんは貴方しかいませんです」
黒髪のショートカット。
…うん、かなり可愛い。

…いやいや、そうじゃなくて
「何かあったの?」
「あ、あの…助けてください!」
「へ?」
「だから、助けてくださいって…!」
「変質者に追いかけられたの?」
「違います!」
「お友達が車に撥ねられたとか?」
「それも違う…」
「もしかして迷子?」
「どこから見たらそんな…」
いや、僕は決してコントをやってるわけじゃないんですけど。

「…生憎だけど、僕には何もできないと思う…お金ないし」
「お金ならいくらでもありますから!」
「はい?」

「助けてくれたら、それなりのお礼もしますから、お願い!」
女の子は俺を拝むように手を合わせる。

「な、何すりゃいいの?」
金銭目当てといえば、そうだった。

だけど女の子がかなり可愛く、俺のタイプだからという、下心があった訳では決してなかった。
金さえくれるというのなら、たとえこれが脂肪の弛んだおばさんでも、
いかにも俺の身体目当てだと思われる、厳ついお兄さんでも、俺はOKしていたと思う。

だって俺の預金は、今晩泊まるネットカフェ代すら、あるかどうかの瀬戸際だったんだ。


…まあ、それはさておき。
『金はある、お礼はする』と言う彼女。
しかし、とてもじゃないけどそんな風に見えないんだけど。

「ねぇ君、ほんとにお金そんなにあるの?」
「あ、疑ってますね?」
顔は笑っているが不機嫌そうな声で彼女は言う。

鞄から財布を取り出す彼女。
女子高生が持つにはシンプルで、地味な感じがした。
「はい。これでいかがでしょう」
そう言って、俺に財布の中身を見せてくる。

… …!!!!!!
「これ、ホントに君の財布?」
「はい」
また不機嫌そうに言われた。

だって、そう思うしかないじゃない。
…財布の中に、びっしりと一万円札の束が詰め込まれてるんだもん…
…彼女、いったいどこのお嬢様なんですか。

「これで納得していただけました?」
「う、うん」
札束いっぱいの財布を持ってドヤ顔で立つ彼女に、僕は呆気に取られた。

「ええ、よくわかりました」
明らかに、一回りくらい年下かもしれない女の子だけど、財力の差のせいか敬語が出てしまった。
「…で、助けてほしいことって何かな?」
「あー、はい。おにーさんに、私の婚約者になって欲しいんです」
「ふーん…って、え!?」
今この娘、何と言いました?

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