ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 970
「うふふふ」
椿ちゃんの可愛らしい笑顔が、今はちょっと怖い。
「僕との間に椿ちゃんができたからって、可愛くなるとは…」
「樹ちゃんも香ちゃんも可愛いじゃない」
「香澄に似たんですよ…」
母娘の言葉にタジタジになっているところに、朝食が運ばれて来るのだった。
「あらぁ昨晩は弥生さんのところに?…」
朝食を運んで来てくれた桜ちゃんが僕に向かい笑顔を向ける…
この営業用のスマイルが今はなんだか怖い;…
「あっ、ああ…なんか飲み過ぎちゃってさ;…それに雨も激しく降ってたし…;」
桜ちゃんに対して必死になって言い訳する僕って…いったい何なんでしょう;…
「匠さん、そう大袈裟にアピールしなくても大丈夫ですよ」
桜ちゃんは笑顔で言う。
「いや、その…」
「このお屋敷には休憩スペースはたくさんありますし、匠さんと弥生さんの関係は誰もが知っていることなので、気にすることはないですよ」
「そうなのかな…ごめん」
でもそれって、僕と弥生さんが昔付き合っていたってことだよな?…
そんな2人がまたそんな関係にならないとは限らないと思うんだけど;…
「それとも…そんなに隠さなくちゃいけない何かが2人にあったのかしらぁ?〜」
「ふふ…それは桜ちゃんのご想像にお任せするはぁ…」
弥生さん;!…そんな誤解を生むようなこと言わないでください!;…
いつまでも僕はこうして振り回される運命なのかな…
それも嫌じゃないんだけどね。
みんな大好きだし、この2人も身体の関係は…
朝食を済ませ、離れの邸宅を後にしお屋敷に戻る。
ちょうど朝の掃除が終わったのか、なんだか廊下がピカピカしている。
さすが訓練された従業員とでもいうのか。
「匠さん、おはようございます」
誰かと思って振り向いたら、由乃さんだった。