ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 954
「あまりに突然だったので、私も…」
香澄はさっきから表情が浮かない。それだけ由乃さんの将来に不安が残るのだろうか。
「お母様はSNSをいくつか利用しているので、それを使えば何とか…恋ちゃんにも協力してもらえれば」
「また今度考えようか」
香澄は頷いて、ようやく微笑んだ。
由乃さんはカップのお茶を一口。
そのあとで、こちらを見る。柔らかな笑顔だ。
「嬉しいは…お2人がそうやって私の為に…」
「何言ってんですか…吉乃さんは僕たちの新しい家族になる人なんですから、こんなこと当たり前ですよ…」
少し口調がきつくなってしまう…
時間が経つにつれ、“女優、花咲夢乃”というよりも、ちゃんと“吉乃さん”という一人の素敵な女性として見れるようになってきたのかもしれない…
「お二人がいたら、私、ここでもうまくやっていけると思います」
「絶対に由乃さんを一人にはしませんから…困ったことがあったら何でも、いつでも相談してください」
「ありがとう」
香澄の言葉に安堵する由乃さん。
指で目を拭う…ちょっとだけ光るものが見えた。
なんだかドラマを見ているような錯覚を起こしそうだよ…
何たって2人とも凄く綺麗だからね…
「おお悪い悪い…すっかり待たせてしまったようだな…」
和彦さんがノックも無しに部屋に入って来る。
そんなさっぱりとした顔をしているところを見ると、やっぱり澪さんに抜いて貰っていたんですかね;?…
「話はほぼ終わっちゃったんですけどね」
「それはすまなかったな」
…和彦さん、さわやかな笑顔だ。
「由乃、どうだった?」
「2人とも優しくてホントに感謝してる…私をサポートしてくれるって、強い言葉で言ってくれて」
「ああ、匠くんも香澄も、私の自慢の、本当の息子と娘のようでね…」