ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 948
やっぱりあの頃の面影が残るその顔に僕は見惚れてしまう。
天井のポスターに劣情をぶつけたことは今となっては申し訳ないくらいだ。
「これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそ…ですけど、僕だって新米みたいなものですから」
「お互い頑張りましょう、ね」
「はい」
僕と由乃さんは手を繋いだまま畔を散歩する…
まるで恋人同士のようだ…
「ちょっと緊張するは…こんな若い子と手を繋ぐことなんて無いから…」
「そうなんですか?…今度演じる役は、僕なんかよりもっと若い高校生とのベッドシーンがあると聞きましたけど?…」
まあ相手は啓くんなんだけどな;…
「それは仕事…プライベートではそんな機会ないもの…」
…まあ和彦さんとはお互いいい歳同士、大人の恋愛ではそんなベタベタしたりはしないだろうな。
少し照れながら手を握る由乃さんが少女のようで可愛らしい。
「でも、こういう時が幸せだなって思う。もっと若かったら匠さんみたいな人に恋しちゃうかも…」
「本気ですか?」
「ふふ、こんなこと言ったら香澄さんに怒られるかしらぁ…?」
僕の問いを笑顔ではぐらかす吉乃さん…
少女のような顔を見せたと思ったら、いきなり大人の女性の顔になる…
そんな掴みどころの無い彼女に、僕は益々惹かれてしまう…
いつまでも憧れの人は変わらない。
もし今も独身だったなら、恋してることだって考えるよ。
「ちょっと風が出てきたわね」
「中に入りましょうか」
僕らは来た道を引き返し、お屋敷の中に戻った。
「では、また明日」
「いつまで滞在されるんですか?」
「もうしばらくはいるかなぁ?いろいろ決めることもあるからねっ」