ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 920
和彦さんが場を締めくくった後、由乃さんと一緒に部屋を出て行く。
この後昼食をともにするようで、僕らはいったんリラックスして椅子に深々と座った。
「綺麗な方でしたね」
「僕らのことも理解していてくれて、ホントに良かったな」
2人で由乃さんの感想を言い合う…
「でも驚いたよな、引退するなんてさ…」
「ええ…こんなことが世間に知れたら大騒ぎになるでしょうね…」
2人の恋愛が発覚した時のことを思い出す…
あんなマスコミの大騒騒ぎも、由乃さんが引退を考える一因にはなったんだと思うよな…
「すべては由乃さんが決めたことだから、僕らはそれを受け入れるだけさ」
「そうですね」
これから由乃さんもここで一緒に暮らすことになる。
僕らは早く由乃さんがここでの生活に慣れられるよう、お手伝いをする、それだけだ。
「お疲れさま」
代わって部屋にやってきたのは弥生さん。お茶とお菓子を持ってきていた。
「流石に気が効くね…丁度甘いもんが食べたいって思っていたんだよ…」
なんだかんだいっても緊張したからな…疲れた身体が甘いもんを欲しているのかもしれないな…
「それでどうでした?…花咲夢乃さんって方は…?」
やっぱ弥生さんもその事が気になってやって来たって訳ですか…
「思った以上に素敵な人でしたよ…テレビで観るよりずっとお綺麗で…」
確かに綺麗なのはもちろんのこと、実物の方がずっと若くて、凄く小柄だったよな…
「将来的にはここで一緒に暮らすことになるのかな?」
「ええ、今撮影してる映画が終わったら引退するそうで」
「そうなの…思い切った決断ね」
後ろにいた恋ちゃんと蘭ちゃんもお茶とお菓子に手を伸ばす。
「それにしてもオーラがすごかったです」
「来ると決まっていても、しばらくは緊張しちゃいますね」