ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 892
「一人で部屋に篭ってるだけで漫画が描けると思ったら大間違いですよ〜」
「そうだよねぇ」
「出来そうな子を雇ってひとつのチームを作るんです。出版社の方も協力してくれますしね」
「知らない世界だなぁ」
「匠さんたちなら特別サービスで、未公開の新作だってお見せしちゃいますけどね…」
「それって俗に言われるヤオイって奴なんだろ?…」
「それは私の趣味の世界であって、そういうのももう頭打ちみたいです。」
「何でも好きなものが書ける訳じゃないんだ…」
「ええ、同人誌に自分の好きなように好きなものを書いていた時の方が…ある意味充実はしていたかもしれないんですけどね…」
売れすぎるのも逆に大変ってことなんだね。
僕はまったく知らない世界だからわからないけど、純ちゃんが苦労しながら作品を描いているのだけは薄々わかった気がする。
「純ちゃん、いつでも遊びに来てくださいね。ここで気分転換したらいいものができますよぉ」
「そう言ってくれると助かるなぁ」
香澄と、娘たちがいるだけで心強いだろうね。
一通り食事が終わり、片付けが始まる…
「よかったらこの後、家に飲みにいらっしゃいません?…」
弥生さんが僕と香澄を誘ってくれる…
弥生さんの住む離れの家は、夜な夜な従業員たちの酒場と化しているんだったよな…
録に飲んではいない僕は、もちろんお邪魔したいところではあるけど…
「どうする?…」
僕は先ずは香澄に伺いを立てる…
「そうですね、私も一緒していいですかね?」
「もちろん…でも樹と香は?」
「私はお酒は飲めませんし、椿ちゃんもいるじゃないですか」
まあ、それもそうだな。
でも僕も酔って粗相するのは控えねば。
「では、待ってますね」