ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 857
そう言って、僕の右の太股の上には夏子さんが、左の太股の上には美月ちゃんがそれぞれ手の平を置いてくる…
なんだか嫌な予感がしますが;…
「それとも…匠くんは好きだったりするのかしら?…」
ノートPCの画面を僕と美月ちゃんに向けてくる夏子さん…
そこには夕べ沙織ちゃんに撮られたあの姿の僕が、恥ずかし気も無くポーズをとっていた…
それをネタに脅してるんですか、僕を…
身を竦め、いたたまれない気持ちになる…
「ご、ごめん、匠くんを脅してるわけじゃないから…」
美月ちゃんが僕の表情を読んだのか急に謝りだす。
「い、いや…」
「男の社員が少ないから匠くんにはこういう役目も担ってもらわなきゃっていうか…ほら、以前みたいな大々的なモデルに集まってもらうプレゼンもなかなか出来なくなってね…」
そういえば啓くんも、それでモデルのバイトをしていたんだったよな…
「あの時集めたモデルは、もう来ては貰えないんですか?…」
「声をかければ来てくれる子もいるでしょうけど、今日の今日となるとなかなかね…」
確かに段取りを持って試着するってもんでもないか…
「そういえば営業二課の新庄くん、近々うちの部署に転属になるはぁ…」
ああ、美玲ちゃんの彼氏のアイツか…
うちのお袋に異様に気に入られて大変なことになったんじゃ…今は考えるのを止そう。
「なるべく匠くんの負担を減らそうと思ってね」
「彼も僕と同じ営業に?」
「ええ、キャリアは匠くんより長いはずだし、モデルにもうってつけだから」
「美玲ちゃんは何か言ってませんでした?」
「ええ、喜んでいるは…転属希望が出ていることを聞いてから、初めに聞いたのは美玲ちゃんにだったのよ…」
「えっ?転属希望って、新庄アイツの方からそれを望んだんですか?…」
「まあ二課の部長からの推薦もあってのことだとは思うけど、最終的には彼の希望という形にはなっているはね…」
新庄アイツ…エリート二課から肩を叩かれたってことなんだな…