ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 834
「どんなときも?」
夏子さんも妙なリクエストを出してきたなぁ。
「はい…男の人の、ソレが元気なときも…っていう…」
「ええっ!?」
…そこまで考える必要があるの?
「社内じゃそんなことできないじゃないですか…だから…」
まあ節操のない新庄だったら喜んでやりそうな気もするけど、それじゃ美玲ちゃんに申し訳無いもんな…
「そんなの適当に書けぱいいんじゃない?…」
そこまで夏子さんが要求してるのか疑問だしな…
「ダメですよそんなの…それに私、前から気になっていたんです…男の人の形が変わったら、我社の製品に窮屈な思いをしていないかって…」
「窮屈…ねぇ」
確かにうちの会社の製品は肌にぴったりフィットするのが多いからなぁ。
それでもそこまで気にすることなのかな…
「多分、匠さんじゃないとこんなこと相談できないと思う…」
沙織ちゃんはパソコンを起動すると僕の方に向き直る。
その顔はいつもの明るい沙織ちゃんとは違う表情だった。
多分これは、そこまで追求したいという真剣なものなんだろうけど…
真面目な沙織ちゃんだからこそ、いい加減なものを夏子さんに提出は出来ないんだろうな…
「分かったよ…出来る限り僕も協力するからさ…」
自分が何をしないといけないのかは分かってはいたけど、こんな沙織ちゃんを前に、断ることなんてとても出来そうもない;…
「よかったぁ!匠さんなら引き受けてくれると思っていましたぁあ」
そこでまたぱあっと明るい笑顔になる沙織ちゃん。
この切り替えの速さは僕も見習わないといけないかなぁ。
「えっと、どれから穿けばいいのかな」
「匠さんの好きなものからで構いませんよ」
床に散らばるサンプル製品の数々。
どれもうちの物らしい、ピッタリとフィットしそうなものばかりだ。
「私も協力しますから」
沙織ちゃんはそう言いながら、着ていたトレーナーを脱ぎだした。