ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 832
「ごめん、お邪魔するね」
「どうぞっ」
家に持ち帰ってまで仕事に一生懸命な沙織ちゃん。
その姿を想像すると微笑ましいというか。
自分も営業頑張らなくちゃなという思いも強まる。
「沙織ちゃんって、彼氏いるんだよね」
「はい、でも美玲さんみたいに同棲してないですし、同じ会社でもないので」
まあお互い、ちょうどいい距離を保っているってことだよな…
「でも僕なんかがお邪魔しちゃって、彼氏焼きもちやいたりしないかな?‥」
「そんなこと大丈夫ですよぉ、これは仕事ですから…」
沙織ちゃんは僕の後ろに周り、スーツの上着を脱がしてくれる…
こんなところまで気を使ってくれる…まるで夫婦のような感覚だ。
沙織ちゃんは将来絶対いい奥さんになるだろう。
「仕事もやらないといけないけど、まずは晩御飯からですね!」
「沙織ちゃん、自分で作るの?」
「もちろんです!匠さんはゆっくりお待ちくださいね〜」
男にとっては理想的な女の子だ。
なんだか彼氏のことが羨ましくもなってしまう…
「彼氏にも手料理を振る舞ったりしてんの?…」
「やだぁ“振る舞う”なんて大袈裟なものは出来ないんですよぉ〜」
謙遜するところがまた奥ゆかしいよな…
それでも少しするとキッチンからはいい匂いがしてきた。
これ、大したものじゃないわけがないような気がするよ。
「有り合わせの上に簡単なものですけど、匠さんのお口にあえば何よりです」
「いやいや、十分じゃないか」
見た目にも彩り良いし、美味しそうだ。
「野菜が多めだね」
「実家から送ってくるんです。農家やってるんで」