ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 828
「おーかーしーいー。葉月、白状なさい」
「えへ、秘密ですよぉ〜」
…いつもの空間に戻りつつある我が部署である。
「ふぁあああああ〜…おはようございまふ…」
そんなところに、ものすごく眠たそうな雰囲気を醸し出す沙織ちゃんが現れる。
「おはよう、沙織ちゃん…どしたの?」
「仕事を持ち帰ってやったんですけど…夜中まで…」
やる時はやる子なんだよな…
「ご苦労様でしたぁ〜それでサンプル品の中から“コレぞぉ”というもの見つかったの?…」
ああ、そういう作業だった訳ですね…
「うぅ〜ん、それがイマイチなのよね;…二三点は絞り込んで来ただけど…」
「それじゃあそれ、匠さんに掃いてもらうしかないでしょう…」
「えー…そこで僕の出番なのかぁ」
「しょうがないですよ。今日は会社内がバタバタしてるし、ほかの部署から応援を依頼できないと思うし」
「…うーん」
素晴らしい職場だとは思うけど、これが唯一にして一番の悩みだよね。
まあ、今日は仕方ないとは思うけど。
「あら、揃ってるわね。朝から大騒ぎで心配してたけど」
夏子さんが部屋に入ってきた。
「まだいるんですか?…マスコミの連中…」
「今日は一日中いるんじゃないかしら?…見兼ねた社長が仕方なく会見を行うよう仕向けているのよね…」
「なんだかそんなのやり方が汚いじゃないですか…」
「マスコミなんてそんなものよ…画面に映っているのは綺麗な部分だけ、裏では結構悪質なことしてんのよ…」
「今日は仕事にならなさそうですね」
「そうみたいね…匠くんも今日は内勤だね」
「もともとその予定でしたし」
外はまだ騒がしいのだろうけど、僕らはいつも通りの日常に戻りつつあった。
ただ、和彦さんの動向は気になった…