ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 805
遥さんは美恵子さんのことを知っているから、あえてそんなことも言ってみる…
「そうですよね…家柄とか血筋とか、お金持ちは金持ちで…気の毒にも思います…」
そうだった;…
そんな理由で、遥さんと巧は美恵子さんに別れさせられたんだったけっかな…
「僕も、真実が分かった今だからできると思うんです、あの2人を元通りに出来ないかって」
「そうねぇ…」
何か思案顔になる遥さん。
「私はああいうことになったから踏み込めは出来ないけど、匠くんなら…」
「ええ、皆さんそう思ってるでしょうから、機会があれば…」
…とは思ってはいるのだが、どうすればいいかなどは自分でもよくわかってはいない…
「きっとお母様はお母様で、巧さんのことを思ってのことでしょうから…ちゃんと話し合う必要があるんじゃないかしら?…」
「そうだね…あの二人は気持ちがすれ違っているんだろうからな…」
「ええ…お母様もお忙しい方だから尚更だは…」
きっと子供の時から、巧は寂しい思いをしていたに違いないよな…
母親…美恵子さんは小さな頃から仕事に追われ、あまり相手にしてくれなかっただろう。
さらに父親は彼の傍にはいなかったのだ。
もしかしたら僕がそうなっていたかもしれない、と思うと怖いが、今はなんとしても2人にいい関係になってもらいたい。
商談が成立したらもう一度2人に会いに行こう。
休憩を終え、僕は自分の部署に戻る。
デスクに座りPCと格闘していると、あっという間に定時の時間がやって来る…
結局今日は、仕事らしい仕事は何もしていない気もしないでも無い;…
「今日は定時で上がれますよね?…」
PCを閉じたところに葉月ちゃんがやって来た。
「ああ見ての通り、葉月ちゃんも早く準備しなよ…」
僕は鞄を持ち、デスクから立ち上がる。