ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 804
「それもこれも、遥さんのおかげですよ」
「私は何もしてないよ〜、面接だってロクに話してないんだし」
「でもあの時遥さんじゃなかったらきっとダメだったと思うし、あれで緊張もほぐれましたからね」
遥さんは隣に座り、微笑む。
「匠くんが努力したからこそ、今があるんだよ。私の方がお礼を言いたいくらいよ…」
いや、入社の時に僕がしたことって、遥さんの指示に従って、あの厭らしいパンツのモデルになっただけだもんね;
あの遥さんが撮ってくれた写真のお陰で、今の僕があるといっても過言では無いよね…
「遥さんが何と言おうとも、僕にとって遥さんは救世主ですよ…。あの時遥さんに会わなかったら…今頃僕はまだ無職だったと思いますし…」
「そうかな…?匠さんだったらホストでも若いツバメでも、何でもやっていけると思うけど…」
「いや、そんな職業、たぶん一生縁がないし、自分から就こうとも思いませんって…」
「そう?匠くんなら似合うと思うよ」
似合う似合わないとかの問題じゃないです…
「ウチがスズタと手を組むようなことがあればそれはもう、歴史的なことだよ」
「そうですか」
「あの会社も代表が替わって、よかったのかもしれないはねぇ…」
スズタのお家騒動は、誰でも知っていることだもんな…
「でもなんか会社内はいろいろと大変なんじゃないかな?…」
「そうね…そういえば、巧さんとはもう会った?…」
「ええ、この間」
「どうだった?」
「どう…まあ、不思議な感じでした。でも、打ち解けていくにつれて向こうの事情もわかってきたし、何とかうまくやっていけそうな気はしてます」
僕は話を続ける。
「ただですね」
「うん?」
「彼と、美恵子さんの間には埋めがたい溝があると僕は思うんです」