ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 796
相当飲んだのかな、まだダルそうな感じだ。
「おはようございます、朝ごはんできてますよ」
「ああ…」
これがいつもの光景だ。
あの時のことを思い出すと、新庄を招いてしまったのは間違いだったと考えてしまう。
いくらお袋が満たされ顔をしているからといって、この家に波風は立てたくは無いもんな…
まあお袋には優しい親父が…新庄にはあんなに可愛い美玲ちゃんがいることだし、夕べのことは一夜の戯れには過ぎないんだろう…
このことは僕だけの胸の中に閉まっておくしか無いよな…
「ああお父さん、おはようございます…」
Tシャツをちゃんと着た新庄が脱衣所から出て来る。
おいそのTシャツ、僕のじゃないかよ;…
「おう、おはよう…」
父さんは目を擦りながら新庄に声をかけた。
「…なんか匠が2人いるみたいに見えたぞ」
まあ着てるのは僕のシャツだからな。
「新庄くん、リビングで裸で寝てたんだもの、ビックリしちゃって」
ああ、飲んで、呑みすぎて、記憶がなかったけど、やっぱりそうなのか。
そこにお袋が帰ってきた、と。
“あんな大きいの”…ってお袋が言っていたのは、要するにそれで見た訳だな;…
それにしても“裸”って“全裸”だったってことかよ;…
「だってそれは仕方なかったんですよ;…先輩が僕も脱ぐからお前も脱げって言うもんで…」
へぇ?…僕がそんなこと言ったんですかぁ?…
…でも目覚めたとき、僕は服着ていたんですが。
酒に飲まれると何も覚えていやしない、僕の悪い癖だが。
「俺もよく覚えてないな」
親父までそう言い出す。
「もう、お酒の弱いもので集まって呑んでたのね」
あきれ返るお袋。返す言葉がない。
「夜中なのに…みんなの面倒見るの大変だったんだからねぇ…」