ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 795
僕は素知らぬ顔で…「夕べ会社のヤツを泊めたんだけど、何処にいるか知らない?」と聞く。
「ああ新庄くんなら今シャワーしてるは…」
紹介もして無いのに名前知ってんじゃん;…まあ当たり前だろうけど…
「なんだアイツ…夕べも親父と風呂入っていたのにまた入ってんのかよ…」
「最近の若い子は朝シャンするのが当たり前なのよ…匠も新庄くんを見習って、一緒に入って来たらどう?…」
「僕は別に…重なるのもアレだし」
「そう?じゃあ朝ごはん作るから、待っててね」
お袋が朝から元気なのは今に始まったことではない。
それでもその表情はいつもよりスッキリして見えたし、なんだか楽しそうだった。
「あっ!先輩;…おはようございます…」
僕がここにいることを驚いた様子で新庄が風呂から出て来る…
まだお袋しか起きてはいないと思っていたんだなお前;…
「ちゃんと服着ないと風邪引くぞぉ;…」
全く;…家には年頃の女子が三人もいるんだから、上半身裸ってことも無いだろうに;…
「す、すいません…!!」
あわただしくまた風呂場に戻ろうとする新庄。
まったく、妹たちが目覚めたらどうするつもりだ、お前は。
「ふふっ…」
それを優しい笑みで、微笑ましく見つめるお袋。
これは、あの夜、あの時2人の間に確実に何かあった証拠に違いなかった。
僕が大人になったからといって、お袋のそういう“女”の部分を認めるのはやっぱり辛い…
子供にとっての母親って、そういう部分を封印した面からしか見たくは無いもんだからな…
「なんだ…今日は皆早起きなんだな…」
寝癖の着いた髪を掻きながら親父がやって来た…