ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 786
「で、ですよね?」
「だからと言って即紹介するとは限らないぞ」
「わ、わかってますよ…」
なんか恭介がしょげている…そんなにメイドが好きなのか君は。
「梓もああならなかったら向こうでメイドやってたかもしれないな」
「ま、マジですか!?」
「なんでそんな顔するんだよ?…やっぱり梓じゃ不服なのか?…」
「あ;…別にそういう訳じゃありませんよ…梓ちゃんだったらメイド服も似合いそうだし…」
メイド服って;…お前の思考は、メイドと言ったらメイド喫茶のメイドしか頭に無いんだろうな;
「まあ青山家のメイドの制服はかわいいけどな…」
そういえばあれって、和彦さんの好みってことなんだろうか?…
あの家の主は和彦さんだから、そう考えてもおかしくはないのだが、どうもそんなようには思えないんだよなぁ。
昼食も後片付けも一通り終わり、リビングでくつろぐ。
恭介は用事があるのかわからないが、別の場所に行ってしまった。
そういえばお袋も遅いなぁ。こりゃ買い物だけじゃなさそうだな。
「あぁ、夏子さん…今夜、本気なのかな」
そうなった時に備え、身体を休めておかなくちゃだよな…
なにしろ夕べは身体を酷使し過ぎたから、悪酔いしないとも限らないからね;…
まあ昼寝でもしようと自分の部屋に行くと、恭介の奴が僕のベッドで寝息を立てていやがった…
コイツってもしかして大物だったりするのかよ?…
そうじゃなきゃ、僕がいるのに断りもなく…図々しいにも程があるだろ;…
まったく啓くんといい、妹の彼氏ってのはどうして僕の足枷になるのだろう。
それももうすぐ終わりなのだから我慢だけども。
「仕方ないな」
この部屋は無理か。
親父の部屋でも借りようかな…
僕はそっとドアを閉めた。