ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 745
「姉貴が今でもファンで、“こんな女性になりたい”って憧れているんですよ…」
佐織ちゃんか…
恭介のお姉ちゃんと既に寝ちゃってんだから、僕も恭介のことをとやかく言える立場じゃないか;…
「今は母親役とかで活躍してるみたいだよな…」
僕にとっての花咲夢乃はこのピチピチの女の子であって、女優として活躍する今の花咲夢乃には興味は無かった。
確かに知名度は増したし、女優としての彼女も非常に美しい。
ただ、僕の中では彼女は未だにこの姿なのだ。
…今ではもう水着グラビアなんてやらないだろうしね。
…それにしても、ポスターで微笑む彼女はどこか香澄に似ていた。
昔からあんなタイプの女の子が好みだったんだなとちょっと苦笑いしてしまう。
「こんな子いないですかぁねぇ〜…いたら即、恋に落ちちゃいますよ…」
君には暫く香澄を紹介するのは止めにしよう;…
「何言ってんだ?…これから一緒になる女の兄貴に向かって、普通そういうこと言うかぁ?…」
「あ、すいません;…ついお兄さんにはなんでも話し易いっていうか;…」
それって“嘗めてる”ってことなんじゃないのか?…
…まあ、よそよそしくされるよりはマシなのだろうけど、馴れなれしいのもちょっと困るかなぁ。
親父もお袋も好青年と認めているだけに強くは言えないのが癪だ。
「…でも、安心しました」
「何が?」
「梓の歳が歳だけに、認められないと思ってましたから…」
「それは無いさ…お前も親父とお袋のこと知っんだろ?…」
「あ、はい…何となくは…」
「まあそういうことだ…、僕はお袋が梓と同じ歳の時に身篭った子供って訳さ…」
本当のことを言うと僕は鈴田美恵子の子供なんだけど、それを説明するほどの整理は、僕の中ではまだ出来てはいなかった。