ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 737
「おお、ちゃんと卒業はするんだな…」
「うん、恭介もそうしろって言うし…」
歳上の旦那に“くん”も“さん”も付けないのかよ;…
「僕があの学校に赴任するのは来年の春からですから、ちょうど入れ替わりですからね…」
そういう問題でも無い気もするけど、まあ同じ学校に腹の大きい女房が生徒でいるよりかはいいかぁ…
「子供が生まれるのも卒業後ですからね」
「それならいいかな」
「それまでには2人で暮らす物件を探そうと思ってます」
「なるべくここの近くがいいなぁ」
梓さん、何かあったらここに駆け込むつもりですね、わかります。
「匠兄ぃはいつから…」
「香澄が退院して、落ち着いたら考えてる」
「和彦さんも喜んでいるんでしょうねぇ…なんたって実の息子の匠兄ぃと、一緒に暮らせるんですもの…」
ここでその話しをするってことは、恭介にも話しているってことなんだな;…
「ああ…まあな…」
本当の父親は和彦さんではなく親父なんだよ…
そう言いたいところではあったが、お袋のことを考え、その言葉は飲み込むしかない…
お袋は僕のことを実の息子として育ててくれた…血のつながりがないにしてもその事実は変わらないんだから、気にしないでおきたい…
「恭介くんは今日も泊まっていくのか?」
「なんかすいません…ご両親もいつでもって言って下って…断るのも申し訳なくて」
それこそ皆が家族…お袋はそう思っていることだろう。
「義父さんは一緒に風呂に入ろうって、楽しみにして下さって…」
親父にそう言わせるなら、本当に気にいられたってことだよな…
「よかったじゃない…今晩は男三人で入ってこれば?…」
いやいや;…僕は遠慮させて貰いますけどね;
「そうですね…お兄さんが一緒にいてくれれば心強いです…」