ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 701
「そんな訳にはいかないよ…僕だってその花木恭介とやらに会ってみたいからね…」
湯槽から出て、身体を洗う。
「そうか…一緒にいてくれるか…」
続いて出てきた親父が、僕の背中を流してくれる。
「それに明日は、啓くんのところにも行ってこようと思ってる…」
「ああそうだな…またこうやって3人で風呂に入りたいもんだな…」
「そうだな…」
親父と僕と啓くん…不思議なものだが、僕ら3人はよく似たもの同士ではないかと思うようになった。
啓くんも梓から話は聞いているだろうけど、僕も今の啓くんがどんな気持ちでいるかは心配だった。
風呂から出てパジャマに袖を通すと、廊下で栞が一人佇んでいるのを見かけた。
「どうした…?」
「あ、匠兄ぃ上がったのね…」
「浮かない顔してんじゃねーか…」
「あ、今から花木くん来るんだって…」
やっぱりそうなったんだな…
「で、憂鬱なのか?…」
「えっ?…そんなことないよ…花木くんは葵姉ぇと付合っている時から知っているし…」
それにしては反応がおかしいじゃないか。
栞だってその花木恭介に興味があるってことじゃないの?と言いたくもなる。
「ふぅ」
「匠兄ぃ疲れてるでしょ」
「まあな」
「無理しなくてもいいよ。香澄ちゃんのことで精一杯なのは私たちでもわかるから…」
「そうだけど、梓のことも心配だからさ…お袋には話したわけだろ…」
「うん、梓は頑張ってお母さんを説得していたんだけど、やっぱり花木くん本人に会わないと何とも言えないってことで…」
「まあそうだよな…親父も同じことを言ってたさ…」
「多分…会えばお父さんもお母さんも、花木くんのこと気にいると思うんだ…」
「何か…そうあって欲しくはない…って顔してんぞ…」