ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 688
「あーもう、私がすぐそばにいるって言うのにー」
「まあまあ」
…純ちゃんが僕らを見ながら愚痴る。
正直そこにいたのを忘れていたよ…周りが見えてないって怖いね。
純ちゃんは改めて僕らに向き直ると、少し赤みが差した顔しながら
「匠さん、おじょ…いえ、香澄ちゃん…幸せになってくださいね」
笑顔の影に、一筋の涙とともに。
「あ、ありがとう…」
香澄とそういう関係にある純ちゃんに、そう言って貰えると本当に嬉しい。
「純ちゃんそんな顔しないでぇ〜、退院すればまた何時だってデキるんですからぁ〜」
おい香澄;…
まあ純ちゃんとなら、多めに見てあげるしかないかな;…
「香澄ちゃん…」
その言葉に感極まった様子の純ちゃん。
「私は、いつまでも純ちゃんのこと、愛してますから…」
…満面の笑みでそんなことを宣う。
香澄、君は罪な女だよ。
「ありがと」
純ちゃんが香澄のベッドに近づき、2人が抱き合う。
おいおい;…仮にも夫の前なんですけどね;
そのくっ付き方は、どう見たってハグの範囲を超えていませんかぁ?
「ゴホン…」
僕は技とらしく咳き払いする…
「クスッ…匠さんたらぁ、焼きもちでぇすかぁ〜?」
香澄がニヤニヤしながら僕のほうを見やる。
大仕事をやった後…完全に吹っ切れたらいつもの香澄に戻ったな。
「そ、そんなわけが…」
「ご心配なさらずに。私は誰でも分け隔てなく愛しますから。でも、男の人は匠さん以外にはいませんけど」
…その言葉が余計にくるんだからなんだかなぁ。
純ちゃんは香澄に頭ナデナデしてもらってるし…もうどっちが年上なんだかわかんないなこれ。